人材のコモディティ化で「業界ではなく、業種」

給料が上がる、下がるについては、「人材のコモディティ化」も念頭に置く必要がある。人材のコモディティ化とは、労働力が差別化できず、たくさんある労働力のうちのひとつということ。付加価値が低いので代替がききやすく、高い報酬が得にくい、ということである。

第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト・永濱利廣氏

グローバル化によって新興国から低賃金の労働が提供され、新興国でもできる仕事は新興国に流れた。その動きは止まることがないし、国内においても「ほかの誰かにもできる仕事」は給料が安くならざるを得ない。

さらに考えなければならないのが、「AI(人工知能)」である。小売販売員、接客係などのサービス業だけでなく、会計士、上級公務員など、知的労働もAIにとって代わられると予想される。新興国の労働力という要素に加え、AIで拍車がかかる、というわけだ。

このことを踏まえると、給料を上げる、ある程度の水準をキープするためには、「専門性の高い仕事」をしなければならない。つまり、「業界ではなく、職種」ということだ。

たとえば運送業ではドライバー、旅行業でパック商品を販売したり、添乗したりする人はコモディティと位置付けられるかもしれないが、各企業で海外進出なども含めて経営戦略を立てる人は、コモディティ化せず、高い給料を得ることも可能である。