「君はどう思う?」でやる気をくすぐる
なぜそうなったか――。その理由に納得できないと人は動きません。上司から部下への指示も同じです。「とにかくやれ」では部下のモチベーションは上がりません。一般的に上司から部下への指示は「What(何を)」「How(どのようにして)」「Why(なぜ)」という順番になりがちです。部下のやる気を引き出すには、まずはじめにその仕事の「理由(Why)」を伝えるべきです。
新人に電話を取らせたい。そのとき、「新人の役割だから君が電話を取れ」と命じられたらどうでしょう。本来、電話取りは、取引先や社内の顔ぶれなど、会社全体が把握できるようになるため、新人には格好の仕事です。「Why」から伝える話し方では、「君には早く成長してほしいと思っている。だからできるだけ電話を取ってほしい」と伝えます。「新人の役割だから」と言われるよりも、やる気が出るはずです。
人の行動には「目的」と「目標」があります。目的とは「何のためにやるのか」という行動の理由で、「目標」とは「いつまでに、何をどうするか」という手段です。部下が「自分は何のために仕事をしているのか」と目的の面で悩んでいるとき、上司が「今月の売り上げの目標を達成しよう!」と鼓舞しても逆効果です。部下が何を考えているか。知っているつもりになっていても、いや、知っているつもりになっているからこそ話し合う場を設けるべきです。それが「君のことを理解したい」というメッセージにもなります。
自分が仕事で悩んでいるなら、「最近、数字が上がらない理由について私なりに考えているんだけど、君はどう思っている?」と意見を求めるのもいいでしょう。「頼りない上司だな」と感じる部下はまずいません。むしろ「頼りにされている」「期待されている」とやる気を出すはずです。部下が納得して仕事に取り組める理由付けをすることも、いまの上司に求められる重要な役割なのです。