16年と40億円をかけてジオンを製品化

アレルギーの体質改善に役立つ「乳酸発酵パパイヤゼリー」とウコンや深海鮫の肝油などを成分とした「レキオのウコン」。

琉球大出身のママの店というのが珍しかったのか、すぐに繁盛するようになり、地元財界の有名人たちも集まるようになった。奥は客たちに「沖縄を自立させるために資金集めで店を始めた」ことを隠さず伝え、次第に沖縄政財界のトップたちが来店する高級クラブになった。

1年でやめようと思ったが、繁盛が続き、やめるにやめられなくなった。そんなとき、1989年に琉球大の中国語クラブの先輩から、中国に驚くほど痔に効く「消痔霊」という薬があることを聞いた。知人も消痔霊による注射治療で痔がたちどころに治ったという。

それは面白いと思った奥は、北京に飛び、消痔霊を開発したという医学者に会った。話すうちに意気投合し、その医学者は「医薬品化して世界に広めてほしい」と言った。当時の中国はいまほど商売熱に浮かされてはいなかった。

帰国した奥は、クラブの経営をしながら、1991年に医薬の専門家2人を含む7人で中薬研(後のレキオファーマ)を設立した。専門家を社長に据えて、消痔霊の安定性試験を始めたが、どうしても成分が沈殿してしまう。奥は改良を強く提案したが、社長は「手を加えるべきではない」と受け入れない。社内からは開発を中止しようという声も出たが、奥はあきらめなかった。

そこで、自ら専門書を読みあさり、医薬関係者に教えを請いながら、自宅で実験を始めた。消痔霊の成分濃度を変えたり、別の成分を添加したり、様々なやり方を探った。消痔霊の主要成分は硫酸アルミニウムカリウムとタンニン酸で、その他の添加物も特殊なものではなかったし、中国の開発者は特許を取っていなかった。

奥は詳細に記録を取りながら実験を繰り返し、半年後に沈殿を起こさない成分比を探り当てた。消痔霊の成分を1つ抜き、別の成分を加えたのだ。この製法を特許として申請し、日本を含む16カ国で取得した。中国の開発者も特許人に含まれている。

奥は3年目に自ら社長となり、厚生労働省との折衝なども行った。動物実験、毒性試験、コンサルタントへの支払いなどでクラブで稼いだ資金はあっという間に消えていった。

さらに治験が始まれば桁違いの資金が必要となる。そこで、共同開発相手を探し、1995年に吉富製薬(現・田辺三菱製薬)と契約。ついに2004年に製造承認が下り、翌05年から販売を開始した。

開発を決意してから16年の歳月と、製薬メーカーの資金を含めて総額40億円がかかった。2004年にはクラブを売却し、ようやくレキオファーマに力を集中できるようになった。

「会社を興すには成功させるという強い思いと、地域のためを考えなければなりません」

自分のためではなく、沖縄のために作った会社だからこそ、ジオンの製品化が実現したのだろう。奥は今日も沖縄のために奮闘し続けている。

(文中敬称略)

レキオファーマ株式会社
●代表者:奥キヌ子
●創業:1991年
●業種:医薬品、医薬部外品の研究開発
●従業員:6名
●年商:非公開
●本社:沖縄県那覇市
●ホームページ:http://www.lequio-pha.co.jp/
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