東大には不可能? アマゾンで教科書販売

日本では書籍の値引きはできない仕組みながら、大学内では特定の機関が1割引きで販売する特権を有している。そのため、教科書を求めて学生が殺到し、購入するだけでも大変な騒ぎになる。

「教科書代は1人年間5万円ほどと言われている。近大には3万人いるので、年間15億円もの売上になる。それをアマゾンで買えるようにします。ネットのリテラシーも高まり、学生もポイントバックを受けられます。他の大学では難しく、近畿大学ならではです。」

従来、多くの大学では一部の機関が独占的に教科書の販売を担ってきただけに、東大や早大などの学校でも口を挟みにくい部分である。実際、早大は一度アマゾンとの提携はしたものの、さまざまな障害で断念した経緯もあるという。今度はそこに切り込んだわけだ。

ところが、また新たな問題点が浮かびあがる。それは、学生のクレジットカード所有率が低いこと。アマゾンでポイントバックを受けるためには、クレジットカードでの支払いが条件となる。さらにカードが必要な理由を、世耕さんはこう語った。

「近大では海外でも学ぶことを勧めています。海外ではクレジットカードがないと生活に不便です」

海外の学生は、クレジットカード、バンクカード、少額小切手などを使い分ける。現金を持っていると危険だからだ。そのため、世耕さんたちはさまざまな仕組みをつくり、学生にカードを持たせようとしている。

「キャッシングなどの機能をはずして、学生らしい購入ができるような上限を持たせるなど工夫も考えます。少額のうちの失敗なら、むしろ人生の勉強になるかもしれません」

近畿大学は今年4月から「全員が1年間の海外留学をする」国際学部を設置し、会話は英語のみのカフェスペース「英語村」なども用意した。さらに海外の提携校を増やすなど、ITに加えて英語も大学の強みとする予定だ。だからこそ、学生にクレジットカードを持たせたいのである。ITリテラシーからアマゾン教科書購入、そこからクレジットカードと海外生活……。なるほど、すべてがつながっていく。

こうした流れの中で、「近畿大学」の“名前の問題”が浮上する。英語でKinkyは「変態」を意味してしまうのだ。マグロにバイオコークスなど世界の学会で発表することも多い近畿大学。「Kinky(変態)」大学と呼ばれた瞬間に失笑を買うこともあったとか。成果がすばらしいほどに「おいおい、この研究は“変態大学”のものか」と、名前とのギャップに爆笑すらされそうだ。世界に羽ばたくためには、これではあきまへん。

世耕さんをはじめとする近畿大学が、「変態大学」の英語名を変え、さらなる躍進を目指す次の一手は、まだまだ続く。

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