退社の10分後に電話をかけてくる
2001年にADSLサービス「Yahoo! BB」を始めたときには、100万件の予約を獲得したものの、通信設備の建設が追いつかず、お客さんを待たせていました。私は建設本部長として数十万件規模の開通遅れを取り戻すミッションを与えられ、約1年半、自宅に帰れずホテル暮らしでした。深夜まで働き詰めの中、孫さんも、毎晩午前2時ごろまで会社にいて「どこまで進んだ」と確認しにくる。事細かに指示を出し、「今井、頼んだぞ。明日の朝までだぞ」といって帰っていく。しかも、それから10分ぐらいすると「一番目の宿題はできたか」と電話がかかってくる。孫さんは、お客さんを待たせることが耐えられないんですね。
顧客視点も徹底しています。企業はどうしても「こうしたら売りやすい」という点に流れやすい。携帯電話に参入したときには、店頭POPの表示や申込書の配列にまでこだわっていました。「これでは、お客さんが書きにくい」といって直させていた。自分たちの都合ではなく、お客さんの都合で捉えれば、複雑で細かい問題も「簡単だ」となるのでしょう。
孫さんは常に大きな枠作りをします。ソフトバンクと一緒にやろう、という企業が次々と現れるのも、捉える枠の大きさを感じるからだと思います。そのひとつの表現が「簡単だ」という言葉なんだと思います。
内藤誼人が分析 心理学的なツボ
【機能的固着】人間には、問題解決の場面でこれまでの経験から慣れ親しんだ手法にとらわれやすい傾向がある。「トイレにいく」「水を飲む」など環境を変えて、気分転換をすると、新しい解決手法を思いつきやすい。
1958年生まれ。82年鹿島建設入社。2000年ソフトバンクへ。ソフトバンクBB常務、ソフトバンクテレコム常務などを歴任。12年よりソフトバンクテレコム、ソフトバンクモバイル取締役専務。