「反転攻勢」に打って出ると明言

6月21日、ソフトバンクグループ(SBG)は定時株主総会を開催した。孫正義会長兼社長は、プレゼンテーションの冒頭で「反転攻勢」に打って出ると明言した。今回の反転攻勢に、重要な役割を担うのが英国の半導体設計企業のArm(アーム)だ。同社の上場によって、SBGはアームの事業運営体制の強化に必要な資金を調達し、AI関連分野での収益を拡大する考えとみられる。

株主総会で経営戦略を説明するソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長=2023年6月21日、東京都千代田区[同社提供]
写真=時事通信フォト
株主総会で経営戦略を説明するソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長=2023年6月21日、東京都千代田区[同社提供]

長い目で見ると、世界的にAIの利用は増加するだろう。それを支える半導体の開発に、アームは中心的な役割を果たすと期待されている。AI利用の増加に必要な高度な半導体の設計需要を取り込み、アームの高い成長を実現する。それによって、アリババに続く成長企業を生み出す。そうした展開をSBGは真剣に目指し始めた。

ただ、目先、SBGの事業環境は不安定に推移する可能性が高い。5月下旬以降、AIの成長期待などを背景に世界的に株価は上昇したが、先行きの期待は行き過ぎだとの警戒感も強い。米欧では金融引き締めが長期化し、金利の上昇によって株式市場の不安定感は高まりやすい。

今後の株式市場の展開次第では、SBGが出資した企業の株価が下落し、業績の不安定感が高まることも想定される。今後のシナリオの一つとして、SBGはリスク管理を強化しつつ、アーム上場のタイミングをはかることになりそうだ。

2年連続で赤字決算の背景

2023年3月期、SBGの最終損益は9701億円の赤字だった。2022年3月期(1兆7080億円の最終赤字)から縮小したが、2年続けて最終損益は赤字だった。

その背景には多くの要因がある。まず、地政学リスクが高まったことだ。ウクライナ紛争が起きた。朝鮮動乱以来、約70年ぶりに主要国が本格的に参加した戦争といえる。先行きの不透明感が高まったため、世界の主要投資家や企業は長期の視点でリスクをとることは難しくなった。

台湾問題も見逃せない。中国では政治体制の強化を優先する習政権が、台湾への圧力を強めた。半導体など先端分野で米中の対立も先鋭化した。台湾、韓国に偏在した半導体の供給は不安定化した。日米欧の政府は、経済から安全保障までさまざまな分野で重要性が高まる半導体の生産を国内で行うよう、主要企業の直接投資を求め、補助金政策などを強化した。

また、世界全体でインフレが進行した。米中対立、コロナ禍の発生、ウクライナ紛争などを背景に、エネルギー資源や穀物、車載用などの半導体など多くの品目で需給のバランスは崩れ、物価は上昇した。2022年3月以降、インフレ鎮静化のために連邦準備制度理事会(FRB)などは金融引き締めを実施し、世界全体で金利は上昇した。