「一兆ドル企業」の仲間入りを果たした

5月24日、米半導体大手エヌビディアは、2023年2~4月期決算を発表した。売上高は前年同期比13%減の71億9200万ドル(1ドル=140円換算で約1兆円)。純利益は同26%増、20億4300万ドル(約2860億円)だった。

台北国際コンピュータ見本市(Computex Taipei 2023)で基調講演を行うエヌビディアのジェンスン・ファンCEO=2023年5月29日
写真=Sipa USA/時事通信フォト
台北国際コンピュータ見本市(Computex Taipei 2023)で基調講演を行うエヌビディアのジェンスン・フアンCEO=2023年5月29日

増益の主要因は、“チャットGPT”に代表される、マイクロソフトなどが実用を急ぐ生成型AIの需要増加だ。

足許、AIを活用してごく短期間で人々が専門技能に習熟することなどが目指され始めた。中期的に、生産、事務などの自動化は加速するだろう。それは、企業の事業運営の効率性向上に大きく影響する。頭(脳)でイメージした通りに、クレーンや建設機器を自分の腕のように動かす日も実現するかもしれない。そのためにAI供給の増加は欠かせない。

決算発表後、そうした期待からエヌビディアの株価は上昇した。5月30日には419ドルまで上昇し、上場来高値を更新した。時価総額は一時1兆ドル(約140億円)を超え、巨大IT企業に並ぶ史上8社目の1兆ドル企業となった。

20年前、エヌビディアの株価は1ドル前後だったことを考えると、直近の株価は400倍超に高騰している。20年前に100万円分のエヌビディア株を購入した人は、4億円の価値を手にしたことになる。

半導体業界は総崩れ状態だが…

2月~4月期、エヌビディアの利益は大方のアナリスト予想を上回った。業績は徐々に底を打ちつつある。ポイントは、生成型AI開発体制の急速な強化だ。同社はゲーム機用の半導体製造ラインの一部を生成型AIに振り向け、需要を取り込んだ。

足許、世界の半導体は総崩れだ。主たる要因として、スマホ、パソコン、巣ごもり需要の反動減などは大きい。メモリ分野では、韓国のサムスン電子とSKハイニックスの業績は悪化した。

ロジック半導体の分野では、微細化(半導体の回路線幅をより細くする技術)に遅れた米インテルの収益悪化が鮮明だ。製造技術の向上が遅れた分、インテルはプロダクト・ポートフォリオ全体で利益率を引き上げることが難しくなっている。スマホなどの需要減によって、世界最大のファウンドリ(半導体の受託製造に特化した企業)である、台湾積体電路製造(TSMC)の業績拡大ペースも鈍化した。