ビッグデータに必要なチップの需要が急増

アナログ半導体セクターでは、米テキサス・インスツルメンツなどの業績懸念が高まった。民生用の電子機器、BtoB分野でのデータセンタ向けチップの需要減少が響いた。世界的に顧客は過剰在庫を抱え、発注の遅延、キャンセルも増えた。

2022年2月~4月期以降、エヌビディアの収益拡大ペースも鈍化した。データセンタ、ゲーム機向け半導体需要の減少は大きかった。だが2022年11月以降、同社の業績に底入れの兆しが出始めた。主たる要因は、チャットGPTなど生成型AIの利用急増だ。

チャットGPTが文書を作成したりするためには、膨大なデータを学習(深層学習という)しなければならない。膨大なビッグデータを扱うチップの設計・開発においてエヌビディアの比較優位性は高い。

昨年後半以降、エヌビディアはマイクロソフトなどが必要とする生成型AIに対応した“H100”の供給体制を強化した。競合相手が少ない最先端の分野であるため、利益率は高い。その結果、エヌビディアが発表した2月~4月期の利益、今後の業績予想ともに予想を上回った。

フアンCEOの「誰もがプログラマーになれる」の真意

今回のエヌビディア決算は、生成型AI利用の急増を確認するために重要だ。自動運転、工場運営の効率化、タクシーやライドシェア時の最適なルート設計など、同社のチップ需要は増えている。省人化、自動化の加速を目指し、エヌビディアと提携する企業も世界的に増加している。

5月29日、台湾での講演でジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は「AIにより、コンピュータに話しかけるだけで誰もがプログラマーになれる」と述べた。その真意は、AIがわたしたちの生活やビジネスを劇的に変化させる可能性が高いということだ。

現在、日常生活の中でAIは家電などの操作をするために用いられることが多い。アップルのiPhoneを使う人であれば「ヘイ、シリ(Siri)」、グーグルであれば「OK、グーグル」、アマゾンなら「アレクサ」と呼びかける。次に「3分測って」と具体的な指示を出す。Siriなどに複雑な計算をするよう指示すると、「わかりません」と答えることも多い。リモコンの延長線、が現在のAI利用の実態といえる。