成長したい企業は社風に合う人材を見つけるべし

明文化されているわけではないが、どんな規模の企業でも「将来管理職になれそうな人」という基準で採用を決めている。そして、新卒採用においてどの業界でも共通する悩みは、「どんな人材を採用すればいいか」というものだろう。私に言わせればこれは非常に簡単で、(1)社会人として必要最低限のスキルを持ち、(2)人望があり、(3)社風に合うか、という3点をチェックすればいい。特に重視すべきは(3)だ。学校での成績がいくら優秀でも、社風が合わなければ、会社とともに成長していこうという気持ちは湧かない。また、A社の社風には合わない学生が、B社にとっては「最適の人材」と評価されることもある。1人の学生に内定が集中する不均衡もある程度は解消される。

20~30年ほど前は「何の色にも染まらずに来てほしい」というのが企業の要望だった。OJTでいくらでも教育すればいいから、とりあえずは教育しやすい柔軟な学生に来てほしい、というわけである。その一方で、本当にOJTが役立っているのか、疑念もあったようだ。しかしバブル崩壊後、日本の企業はOJTに自信を持つようになった。

バブル期はとにかく日本人全員が忙しかった。労働力確保のために大勢の学生を採用したはいいが、教育まで手が回らないまま、新入社員を現場に送り出す企業も珍しくなかった。そのせいで「Excelしか使えないSE」や「商品知識がまるでない営業」が続出したのだ。そして、バブルの狂乱が終わり、社内を見回してみると「できません」「わかりません」と平然と言い放つバブル入社組たち。その後急速に暇になった日本企業は、OJTや研修に長い時間を割けるようになった。そうやって教育された新入社員は、「勉強すれば何でもできる」ことを知っているため、どんな状況変化があっても「(今はできませんが)少し勉強する時間をもらえれば対応できると思います」と答える。これこそが真の「使える」人材だろう。企業はOJTの大切さを逆説的に知ったというわけである。