これは、逆に低収入の人の話題にネガティブコメント、つまり「会社が悪い。自分はちゃんと評価されていない」といった不平不満が多いことにも通じると午堂氏は指摘する。
「結果の出せないサラリーマンは、儲けようという意欲が低い。自分の環境は誰かから与えてもらうものだという意識が強く、自分から積極的に何とかしようということよりも、何でも会社が悪い、社会が悪いと言って、他人のせいにするような話をすぐにします。この仕事はこうやればもっと面白くなるとか儲かるという前向きな話にはならない。そうした人は自分と意見が合う人とだけで群れて、お互いに癒やし合って終わってしまう」
お金持ちの人と話をするときにもっとも盛り上がる話は何なのか。國貞氏は「いろんな会話があるなかで、きっかけになるのは健康とダイエット」だという。とくに体をリラックスさせるマッサージや指圧といった身体周りの話は社長同士でもよくしている。日本人が誰でも論じられるのは、健康と教育と民間療法といわれているくらい、健康話は多くの人が関心をもつ共通の話題だ。
「社長たちは、健康に対してそれぞれ独自の理論をもっている。それが特別に医学的に正しいわけではありません。極端な例を挙げれば、1日1食しか食べない私の親しい社長がいて、彼はお腹が空いたらダイエットコーラを飲んでいます。移動は全部歩きです。深夜のテレビ局の取材の後や会合が終わってハイヤーが用意されていても、途中で降りて自分の会社や自宅まで歩く。彼の理論としては、とにかくカロリーを摂取しなければ痩せると。それが健康にいいかどうかは疑問だけれど、『俺の理論だからこれをやり遂げる』という気持ちが強い。しかも携帯電話やスマートフォンに入っている健康管理のアプリで、『今日はこれだけ達成した』と1日の結果を確認するのがとても嬉しいらしく、人に話したがる。マッサージのお店なども、人にすごく紹介したがります。自分の健康法を広めたがるし、その話になると異様に長くなります」(國貞氏)
ところで金持ちは、どんな悩みが話題になるのか。
「起業して成功したオーナー経営者や外資系エリートサラリーマン、いわゆる新富裕層に多い」と前置きして、國貞氏がこう話す。
「酒を飲んで愚痴をこぼすのが、奥さんと子どもの話です。まず、豪華マンションの費用と奥さんの浪費。それとインターナショナルスクールに通わせる子どもの教育費と、年1回開かれる学校のチャリティーに、奥さんがベンツを1台出品しちゃった話。いくら稼いでも金が出ていくという悩みです」