「ついにT会の婚活パーティがあったんですよ」

と、独身セレブ男子のNさんが教えてくれた。T会は昔からあるセレブの社交クラブなのだが、そこの婚活パーティなら、そうそうたるメンバーに違いない。だいたいNさん自体が「一族で初めて働いた」というほどの資産家の家に生まれている。

「どんな人が来ていたんでしょう?」と聞くと、

「紹介者のある人しか入れないんだけれど、その紹介者も元総理のAさんとか、そのぐらいのレベルじゃないとダメなんですよ」

お金持ちは密かに、こんなところで婚活していたのだ。

また、以前ブラックカードの会員誌を編集している人にこんな話を聞いた。

「クリスマスにブラックタイのパーティを主催していますが、結構参加者は多いですよ。でもお金持ちならその日の予定は、とっくに埋まっていると思うんですが……」

確かにそうだ。お金持ちは時間やお金をかけて、わざわざ知り合いのいないパーティなんかには絶対に行かない。ブラックカードやプラチナカードを珍重するのは、新興セレブで30代、40代が中心だと彼女は言う。

旧リッチ層のお金持ちには見えないつながりがある。慶応の幼稚舎、学習院、成城、成蹊。関西なら関西学院、東海なら南山大学などの卒業生のルート、ハーバードなど海外のMBAのルート、スイスの寄宿学校のルート、名門の中高一貫校、果ては名門幼稚園や名門幼稚園に入るための予備校などの縁が複雑に絡まっていて、それがビジネスの世界にも網の目のように張り巡らされている。

だいたいお金持ち同士は結婚式などで必ず顔を合わせているから、別に社交クラブなどで集う必要はない。日本で英国の社交クラブのようなものがあるとしたら、名門ゴルフクラブだ。関東だけで7つある。銀行家一族の友人が40代の若さで父親の跡を継ぎ、名門ゴルフクラブに入ったところ、一気に一流銀行の頭取や上場企業の会長レベルとのつながりができた。しかも「毎週、次は勝負しましょうと言われるので、いかざるをえない」という。まるで欠席の許されない学校のようだが、ゴルフクラブで毎週末社交しているので、それで十分なのである。

この名門ゴルフクラブにはどうやったら入れるのか? あるクラブの会員は言う。

「推薦者が2名、それから理事会が審査。元巨人のN島さんも入れなかった。基本的に芸能人はダメです。某企業の社長Kさんは7回も審査に挑戦してやっと入れた」

ハードルはかなり高く、お金を積めば入れるものでもないのだ。そのクラブには鉄のルールがあって、「クラブの会員同士で連絡するとき、どんなに社会的地位がある会員でも秘書に電話をかけさせるのはご法度」。どんなに偉い人でも、プライベートの遊びの場には同じ立場で集うのが基本ということなのだろう。