論理のなかに感情を挟み込む

ビジネスパーソンがTEDのスピーチを参考に、人の心をつかみ、行動に駆り立てるような発信力を身に付けるにはどうすればよいでしょうか。

説得力の源泉はロジック、エモーション、トラストという3つの要素にあります。

ロジックは説得力の基本で、スピーチやプレゼンを行うときは、次の2つのポイントが備わっているか常に確認することが大切です。

1つ目のポイントは、主張が明確で絞り込まれているか。1回のスピーチでたくさんのことを伝えようとすると、一番伝えたいことがぼやけてうまく伝わらないことが多々あります。「このテーマについて話そう」と意識していても「このことを伝えよう」とメッセージを明確に意識していないとき、こうした事態が生じがちです。TEDの登壇者がメッセージを研ぎ澄ませているように、1分の発言でも30分のプレゼンでも、伝えたいことを一言で言えるようにしましょう。

2つ目のポイントは、理由が明確で、事実とデータに基づいた主張を述べているか。メッセージは理由と一緒に伝えられて、はじめて聞き手は納得するものです。これが押さえられていないメッセージは、単なる自分の思いの空回りになってしまいます。

以上のロジックの部分に関しては戦略コンサルタントが書いたロジカル・シンキング、あるいはそれをベースにしたプレゼンテーション技術の本も参考になるでしょう。

プレゼンテーションについて勉強する多くの人は、ロジカルであることで必要十分だと考えてしまいがちです。しかし、実はそこに落とし穴があります。人の心を動かすためには、わかりやすくロジカルに話しているだけでは不十分です。特に、話の内容の当事者としてプレゼンテーションをする場合は、聴き手の感情に訴えかける必要があります。個としての思いを絡ませ、熱意を伝え行動に駆り立てることが大切なのです。

エモーションが必要と言うと「客観的な事実と主観的な思いをまぜこぜにするな」と言う方がいるかもしれません。そうしないためにはまずロジカルな骨格を最初につくり、そのなかにエモーションを挿入していくようにすることです。

「私はこう考える。その理由はこうである」とロジックを固めたうえで、自分の経験談や現場で起こっていること、たとえば新商品であれば担当者の開発にかける思いや試行錯誤を上手に挿入していくことで、客観的事実と主観的な思いをまぜこぜにしない話ができるようになります。

エモーションを挟みながらロジカルに話を組み立てる。そして、そのベースにトラスト、すなわち話し手の信頼感を届けることが大切です。わかりやすく、感情を込めていくら流暢に話をしたとしても、話し手を信頼できないと聞き手は安心してメッセージを受け入れることができません。

トラストを付け焼き刃で生み出すのは不可能です。必要なのは専門性と誠実さで、その人の話の内容が深い知識と経験に基づいていて、かつ日頃の行いが周囲から信頼されているものかどうか。うわべだけつくろって誠実さを演出しようとしても、聞き手はニセ者感を察知するものです。