異性に心がときめき、セックスにまで結びつけば、積極的に生きる意欲が湧き、生活に張りが出てくるのも事実。「性は若者や子づくり世代の特権だと考えがちですが、性は生まれてから死ぬまで、人間にとってかけがえのないもの、生きるエネルギーなのです。性は生のマグマともいえるでしょう」と話すのは日本家族計画協会理事長で同クリニック所長の北村邦夫氏だ。

「セックスには3つの側面があります。1つ目は生殖。子どもをつくるための性。2つ目は連帯で、触れ合いを大事にする性。3つ目が快楽です。男性や閉経を迎えて妊娠に関わらなくなった女性の性行為には、連帯や快楽が非常に強く表れます」

そして挿入できない時期がきても「愛することは触れ合うこと」というのを忘れないことが大事だという。

「ラブホルモンとも呼ばれるオキシトシンは、セックスのときだけでなく、触れ合いを通じて分泌量が高まります。その結果、快楽が得られるだけではなく、ストレスからも解放されます。異性を愛して肌を触れ合うことは、高齢者の生き残ろうとする力を高めるのです」

“人間と性”教育研究所副所長の岩淵成子氏も「熟年は性欲解消のセックスから互いの存在を確認するセックスに変えるときです」と語る。

「熟年のセックスを楽しむには、挿入にこだわる必要はありません。妊娠の不安はありませんから勃起時間の長短など関係なく、自分と相手が心と身体を一体化でき、性の喜びを表現し合うセックスを心がけるべきです。それには女性の身体を把握し、互いに思いやるセクシュアルなコミュニケーションが重要でしょう」

ところでシルバーエージの性の実態はどうなのか。北村氏がジェクスの依頼で行った「ジャパン・セックス・サーベイ」の1年間の性行動を調査した2012年版で見てみよう。過去1年間にマスターベーションをした経験がある人は、50代では84.5%、60代でも65.6%があると回答。女性は50代で53.2%、60代で32.1%だ。

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既婚者の最近1年間の自慰頻度、既婚者の最近1年間のセックス頻度

性交経験についてはどうか。40代以上の男女ともに90%を超えているが、「この1年間」に特定しても男性では50代で66.7%、60代で55.0%。女性は各49.7%、27.6%になる。同年代の女性に比べて60代男性の性欲の強さが目立っている。既婚者の自慰、性交頻度については表の日本性科学会のデータを見てもらいたい。