組織で無理を可能にするには

私が組織づくりで長期的に見ていることは、デシジョンメイキングする立場にある人がしかるべく判断を下せる能力があるかどうかです。シニアマネージメントであれ、どんな小さなグループの長であれ、同じです。少しずつ任せてみて、結果をみながらフィードバックをしていくしかありません。フィードバックをかけるタイミングと、どのようにかけるかに気をつけないと、やる気や信頼関係が低下することもあります。

ここで注意しなければいけないのは、結果が出ないのは、本人がうまく遂行できなかったからなのか、それとも仮説が否定されたからなのかを区別することです。うまく遂行できなかったのであれば、それは正していく必要がありますが、仮説が否定されたのであれば、それは仮説の立て方を検証する必要があります。その仮説が十分練られて、 考え抜かれたものであれば、本人を勇気づけてチャレンジし続けることをサポートしなければなりません。このあたりの見極めは無理なことを可能にする組織づくりで重要だと思います。

チャレンジし続けることを促すには、普段から好奇心や学びの心を持って経験のないことこそやってみたいと思える人材を育てる意識が大事です。もちろん、誰もがそうなれるわけではありませんが、組織内の役割によってはこのような能力を持っている人が必要な場面が多い場合、適材適所で人材を配置していくしかありません。組織のあらゆるところにイノベーティブで柔軟な考え方ができる人材を配置できれば、組織のパフォーマンスは高まると考えています。

豊富な経験をもとに、できる・できないを考える時でも、「これは無理だ」と思った瞬間、本当に無理なのかを疑う習慣をつけることは大事です。固定観念やその分野の常識から導きだされた答えを疑うことは、「無理」を「可能」に変えていく大切な第一歩です。これを繰り返すことにより少しずつイノベーションを起こす力が磨かれていくのだと思います。

窪田 良(くぼた・りょう)●1966年生まれ。アキュセラ創業者であり、会長、社長兼CEO。医師・医学博士。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学院に進学。緑内障の原因遺伝子「ミオシリン」を発見する。その後、臨床医として虎の門病院や慶應病院に勤務ののち、2000年より米国ワシントン大学眼科シニアフェローおよび助教授として勤務。02年にシアトルの自宅地下室にてアキュセラを創業。現在は、慶應義塾大学医学部客員教授や全米アジア研究所 (The National Bureau of Asian Research) の理事、G1ベンチャーのアドバイザリー・ボードなども兼務する。著書として『極めるひとほどあきっぽい』『「なりたい人」になるための41のやり方』がある。Twitterのアカウントは @ryokubota 。 >>アキュセラ・インク http://acucela.jp

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