カレンダーを見てもピンとこないようなら相当危ない
今日は何日だっけと聞いてもいい。日付がわからなくなるのは、認知症の典型的な症状なんです。おそらくカレンダーを見ながら答えるでしょうけど、それでなんとかわかるならまだセーフかもしれません。カレンダーを見てもピンとこないようなら相当危ない。年齢も同じ。『今年いくつだっけ』と尋ねる。生年月日は言えても、今の年齢が言えないことがあるんです」
毎回、年齢を聞くことに抵抗があるなら、時事的な話題もいい。
「『総理大臣って誰だっけ』『今年のオリンピックはどこだった』など、時事問題を話題に出す。時事的な動きについてこられなくなったらちょっと危ないですね」
こうした日々の確認に加えて、お盆や正月、5月の連休の帰省は、生の現場を直接見られるチャンスだ。どこに着目すべきか。
「久しぶりに行って何か違うなと思ったら、その感覚を大事にしてほしいですね。年のせいにしないこと。鍋を焦がす、薬の服用を忘れる、何度も同じものを買ってくるといった失敗を見逃さないように。また、同じことを何度も言う、約束や伝言が伝わらない、ゴミ屋敷になってきた、掃除をしないなど、生活に変化が表れます。我々専門医は冷蔵庫の中を見ると認知症かどうかわかるんです。同じものばかり入っていたり、食べ終わった弁当箱やゴミがあったり……」
一緒に温泉旅行にでも出かければ、朝から晩まで観察できるいい機会だ。
「認知症だと、大浴場から自分の部屋に帰れないこともある」という。
1982年、滋賀医科大学卒業。87年名古屋大学医学部大学院修了。総合病院中津川市民病院内科部長、国立療養所中部病院内科部長などを経て現職。著書に『地域回想法ハンドブック』(河出書房新社)、『やさしい患者と家族のための認知症の生活ガイド』(医薬ジャーナル社)など多数。医学博士。老人病専門医。