このように認知症が原因の物忘れには、特徴的な症状がある。加齢による物忘れなら笑い飛ばせるが、そうでなければ認知症を疑うべきなのだ。

その認知症を引き起こす病気は、70種類以上もある。特にアルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症は3大認知症と言われている。

アルツハイマー型認知症は認知症の半数以上を占め、記憶障害が最も早く表れる。

血管性認知症は、脳卒中などの発作で記憶に関わる部分が影響を受けて発症する。

レビー小体型認知症は、レビー小体という異常なたんぱく質が大脳皮質に広がって発症する認知症。幻視やパーキンソン症状を伴うことも多い。

認知症の多くが神経変成疾患や脳血管障害によるもので、治療で進行を遅らせることはできても、根本的な治療は難しい。

このように一口に認知症といっても、原因疾患でいろいろな型があるが、本記事では、認知症全体の入門編として、認知症に早く気付き、適切に対応するためのポイントを紹介しよう。

では老親を持つ我々に具体的にできることは何なのか。

「1つの目安は、ちょうど握力や歩くスピードが落ちてくるころです。65歳を超えると認知症は劇的に増えてくる。まだ若いからなどと安心せずに、目を配る必要があります」

まず親が60代になったら、言動や生活に注意を払おう。

「認知症は早期発見・早期治療が効果的な病気。『まさかうちの親が』ではなく、『もしや認知症では』と疑うことから始めなければいけません。早く見つけて薬をもらう。それで寿命も変わってくるし、周囲の負担も減るんです。そのためには、認知症を病気として捉え、認知症の知識を身に付けておくことが大切です」

だから、鍋を焦がしたり、薬の服用を忘れたり、同じものを買ってきたりといった失敗が起こったら、認知症が原因かどうか調べるのが第一歩なのである。

だが、実家を離れて暮らしていると、親の日常の失敗などはなかなか気付けない。その間に症状が進んでしまうこともある。

「毎日帰れなくても、1日置きくらいのペースで、ふだんから親に電話すればいいんです。今はスカイプのようなビデオチャットもある。『5月1日に帰るからね』と電話して、後日、『いつ帰るか覚えてる?』と尋ねてみる。知らんと言ったら危ないですよ。