「トイレが汚かった」「店員に笑顔がなかった」等の指摘
しかしリストラや店の売却による利益嵩上げは、いつまでも続けられるものではない。
日本マクドナルドでは09年、直営店売却に続いて、全店舗の11%にあたる413店を一斉に閉店している。これによってさらに総資産が圧縮され、また閉鎖された店舗の顧客が近隣のマクドナルドへ流れて、既存店の1店あたり売上高も向上した。
しかし、既存店の1割以上を閉店したにもかかわらず、実際の既存店の売上高の向上はわずか1%程度にとどまったのだ。
私がマクドナルドの異変に気がついたのは、12年、経産省の支援の下で、自らが調査システムを設計したJCSI(日本版顧客満足度指数)調査において、マクドナルドの順位が急低下しているのを知ってからだった。それまで、ロイヤルホストやデニーズ、吉野家などより上だったマクドナルドの顧客満足度(CS)が、その年、これらすべてのチェーンに一気に抜かれてしまったのだ。
この調査では「トイレが汚かった」「店員に笑顔がなかった」といった指摘が多く見られた。過去1年間の印象を聞いているので、12年調査のCS低下は、11年にマクドナルドで何らかの問題が起きたことを示唆している。
これだけCSが落ちているのに、表向きの業績は絶好調。これはどう考えてもおかしい。「何か隠された裏事情があるのでは?」と改めて財務諸表を精査してみた。その結果、ここまで述べてきたような問題が浮かび上がったのである。
原田が社長に就任した04年に6億人台だった来店客数は、4年後の08年には9億人を突破。その一方、作り置きをなくしたことも手伝って、スタッフへの負荷が大きくなりすぎ、店内の掃除をしたり、笑顔をつくる余裕すらなくなっていたのだ。
安くておいしいコーヒーを出し、24時間営業を行ったことでマクドナルドの客数は増えたが、一方で店舗が喫茶店化し、昼間にノートパソコンを抱えたビジネスマンが仕事したり、深夜に男性客がたむろするようになった。
その結果、ファミリーや女性客の足が遠のいてしまった。来客数が増え短期的な売り上げは伸びたが、客単価は減少し、さらに低価格のコーヒーを提供し始めたセブン-イレブンなどのコンビニエンスチェーンと競合するようになった。