日本IBMは、同性カップルに結婚お祝い金制度

【LGBT施策のメリット2】Retention

ふたつ目は「離職回避」。まだまだ多くのLGBTはセクシュアリティを公にせず働いているのが現状なので、結婚をしていないと海外赴任できない、職場の雰囲気が差別的で耐えられない、などを理由に、より寛容な職場を求めて、実際に転職する人がかなり存在します。

時代の変化の中で、LGBTフレンドリーな職場も少しずつ増えているので、企業が社員の離職の本当の理由を把握しないまま、優秀な人材を他社に奪われるケースも増えていくでしょう。

日本IBMでは、社内のLGBT当事者グループをサポートしたり、彼らと共に望ましい職場づくりに取り組んだりしています。実際には、結婚お祝い金制度を同性カップルに広げる施策が導入され、20名近くの社員がこれまでに申請をしているそうです。同社の先進的な取り組みとして有名な事業所内保育園も、今後は子どもを持つLGBT社員にも拡大していくのかもしれませんね。

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電通ダイバーシティ・ラボが今年4月に全国約7万名を対象に実施した調査を元に算出したLGBT層の消費・サービス市場は5.94兆円。2012年の電通総研などによる調査では同5.7兆円。単純比較はできないが、3年間で2400億円以上拡大したことに。
【LGBT施策のメリット3】Development

3つ目は「能力発揮」。仕事さえしていればプライベートは関係ない、なんて言葉をよく聞きますが、職場の信頼関係は想像以上に仕事以外での会話や時間がベースとなって築かれています。

LGBTは、セクシュアリティがバレないかと同僚との何気ない会話にさえストレスを感じたり、週末の集いにも参加しづらく愛想のない奴というレッテルが貼られたりしがちです。欧米の調査では、カミングアウトできない職場では仕事の効率性が落ちるというデータも存在します。

野村證券では、LGBT当事者へのサポートだけでなく、職場でのアライづくりに力を入れています。Ally(同盟、支援、仲間)が語源のアライとは、LGBTのことを積極的に理解し、特別視せず応援するストレート(セクシュアル・マイノリティ以外)の人たちのことです。隣の席で声を挙げられず苦しんでいるかもしれない当事者の代わりに、職場全体の理解度を高め、働きやすい雰囲気を引っ張ってくれる存在は当事者にも安心感と勇気を与えます。

【LGBT施策のメリット4】Risk-hedge

4つ目は「危機管理」。人口の約7.6%(「LGBT調査2015」電通ダイバーシティ・ラボ)とされるLGBTは、社内と同じように企業が接するお客様のなかにも、取引先のなかにも存在します。自社の社員が無知識や無理解のため社外の人に差別的な発言や行動をしてしまうことは、企業にとってはリスクです。企業イメージに傷をつけるだけでなく、訴訟沙汰となったり、取引先からの仕事を失ってしまったりというケースも、今後は表面化してくるかもしれません。

LUSH JAPANでは、NPOや自治体などによるLGBT関連の取組みを支援したり、自社で応援キャンペーンを実施したりするだけでなく、店頭に立つスタッフも含めた社員研修や社内制度整備に力を入れています。企業としてのLGBT応援メッセージと、実際のお客様が企業に触れる店頭での社員の対応や社内の福利厚生にギャップがあることは、むしろマイナスのイメージ醸成に繋がりかねません。発信だけで実態が伴わない企業によるLGBT支援活動は、欧米では「ピンクウォッシュ」とも呼ばれ、大きな不買運動につながることもしばしばです。