セーフティーネットのあるLGBT、ないLGBT、それぞれの老後サバイバル

LGBT層が抱える問題は、前回(「なぜソフトバンクは性的マイノリティに愛されるのか」 http://president.jp/articles/-/12589 )綴った就職活動や働きづらさだけではない。

同性婚やパートナーシップ制度が法律で定められていない日本では、LGBTはたとえパートナーがいたとしても経済的・福祉的な保障がなく、地域社会との距離もあり老後の不安が重大なテーマになっている。

「LGBTの中でも、セーフティーネットがある層とない層がいる」

と語るのは、大手広告代理店マンで、LGBTにとっても心地よい場所づくりを目指す特定非営利活動法人グッド・エイジング・エールズの代表、松中権氏である。

「例えば70代や80代のLGBTは既婚者が多いのですが、その世代は配偶者や子どもには自分のセクシュアリティを隠して暮らしています。本当の自分を明かして自分らしく暮らせないのは苦しいことではありますが、もし自分に何かがあれば家族が助けてくれる安心感があります。問題は、その下の50代、60代。今後老後を迎えるこの世代は、LGBTであることを受け止めながら、自分を偽って法律婚をするという選択を選ばない人が増えています。ただ、今はパートナーがいても、彼らを守る法律や保険商品はない。介護が必要になった時に面倒を見てくれる子や孫もいない。家族同士の付き合いが当たり前の地域社会とかかわりを持つのも苦しい。常に漠然とした不安感があります」(松中氏)

同じLGBTの中でも、とりわけ深刻なのはL(=レズビアン)の女性である。

「ゲイ(G)の50、60代は、引退している方も多いですが、世代的に手当ても厚く年金もあります。収入面でも、正規雇用者が多く比較的安定しています。一方、その世代のレズビアンの方は非正規雇用者が多い。女性同士だと、男性同士に比べ世帯収入は低いですね。さらにトランスジェンダーはそもそも仕事に就けていない方も多いです」(松中氏)