【田原】おもしろい。そういえば、本物の花を使っている作品がありましたね。あれはデジタルじゃなくてリアルな花が天井から吊り下げられていたけど、僕が動くと花も動いた。
【猪子】「Floating Flower Garden―花と我と同根、庭と我と一体」ですね。あの作品は、空気中から水分を吸って生きられる花を使っています。人が入るとセンサーが感知して、鑑賞者のまわりの花がモーターで引き上げられ、半球状の空間ができる。鑑賞者同士が近づくと空間が一体化するから、これも関係性を変えるアートの一つです。
【田原】作品名もユニークですね。
【猪子】もともと日本の禅の庭は、山の中で自然と一体化するために修行していた禅僧の修行場として生まれました。それをもとにもう一回庭をつくろうとしたのが、この作品です。作品名は「天地と我と同根 万物と我と一体なり」という禅の言葉から取りました。世の中のもののすべては同じルーツで、自分と一体であるという意味ですが、まさに花や庭と一体になる自分を感じてもらえればいいかなと。
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。若手起業家との対談を収録した『起業のリアル』(小社刊)ほか、『日本の戦争』など著書多数。