2018年6月に東京・お台場にオープンした「チームラボボーダレス」。年間開館者数は約230万人で、単独のアーティストのミュージアムとしては、ゴッホ美術館(オランダ)を超え、世界最大規模という。世の中を驚かせるアートを生み出し続ける“ウルトラテクロノジスト集団”チームラボ。代表の猪子寿之氏と評論家の宇野常寛氏の共著『人類を前に進めたい チームラボと境界のない世界』(PLANETS)から、2人の対談をお届けしよう――。
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『グラフィティネイチャー 山山と深い谷』

五つのコンセプトを持つ世界

【猪子】実はこれまで、直接的に「ボーダレス」っていう言葉は使ってこなかったんだよね。今、世界はおぞましい方向に向かっている気がして、そんな空気の中で、境界なく連続していることが美しい世界をつくりたかったんだ。

具体的に説明すると「ボーダレス」は、五つのコンセプトを持つ世界からできているんだ。

一つ目は「Borderless World」。アート自体が展示されている場所から動き出し、鑑賞者の身体と同じ時間の流れを持つ。そして、作品同士がコミュニケーションすることで、境界のないひとつの世界をつくり上げていく世界です。

二つ目は「チームラボアスレチックス 運動の森」。これについては後でも詳しく話すけど、一言で言うと「身体的な知」をアップデートする取り組みだね。

三つ目は「学ぶ!未来の遊園地」(『お絵かき水族館』、『すべって育てる! フルーツ畑』ほか)。

四つ目は「ランプの森」。2016年にフランスで展示した作品(『呼応するランプの森‐ワンストローク』)などを展示しています。

そして五つ目が、丸若裕俊さんが手がけるお茶「EN TEA」とコラボしたティーハウス『EN TEA HOUSE 幻花亭』。ここでは、器に茶が注がれると、その中に花が無限に生まれ、咲いていく作品(『小さきものの中にある無限の宇宙に咲く花々』)が体験できるよ。

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『小さきものの中にある無限の宇宙に咲く花々』と『茶の木』

丸一日かけても見きれない「圧倒的規模」へのチャレンジ

【宇野】とにかく驚いたのが、この圧倒的な規模だよね。

【猪子】「ボーダレス」の作品はぎゅうぎゅうで、壁も天井も床も満杯にしてしまうレベルの物量になっている。ミュージアムの施設面積が1万平米と超巨大なんだ。

【宇野】この規模にチャレンジしたことは、結構本質的な話だと思うよ。規模のレベルで、これまでとは違う鑑賞体験にならざるを得ないと思うんだよね。既存の美術展って、普通は長くても数時間くらいで観終えられる想定のもので、これまでのチームラボの展示もほぼその範疇にあったと思う。

でも今回、全部をしっかり観るには最低半日は必要で、むしろテーマパークとかに近いものになってるよね。しっかり観ようと思うと、丸一日かけても作品のすべてを観きれない。