五つのコンセプトを持つ世界
【猪子】実はこれまで、直接的に「ボーダレス」っていう言葉は使ってこなかったんだよね。今、世界はおぞましい方向に向かっている気がして、そんな空気の中で、境界なく連続していることが美しい世界をつくりたかったんだ。
具体的に説明すると「ボーダレス」は、五つのコンセプトを持つ世界からできているんだ。
一つ目は「Borderless World」。アート自体が展示されている場所から動き出し、鑑賞者の身体と同じ時間の流れを持つ。そして、作品同士がコミュニケーションすることで、境界のないひとつの世界をつくり上げていく世界です。
二つ目は「チームラボアスレチックス 運動の森」。これについては後でも詳しく話すけど、一言で言うと「身体的な知」をアップデートする取り組みだね。
三つ目は「学ぶ!未来の遊園地」(『お絵かき水族館』、『すべって育てる! フルーツ畑』ほか)。
四つ目は「ランプの森」。2016年にフランスで展示した作品(『呼応するランプの森‐ワンストローク』)などを展示しています。
そして五つ目が、丸若裕俊さんが手がけるお茶「EN TEA」とコラボしたティーハウス『EN TEA HOUSE 幻花亭』。ここでは、器に茶が注がれると、その中に花が無限に生まれ、咲いていく作品(『小さきものの中にある無限の宇宙に咲く花々』)が体験できるよ。
丸一日かけても見きれない「圧倒的規模」へのチャレンジ
【宇野】とにかく驚いたのが、この圧倒的な規模だよね。
【猪子】「ボーダレス」の作品はぎゅうぎゅうで、壁も天井も床も満杯にしてしまうレベルの物量になっている。ミュージアムの施設面積が1万平米と超巨大なんだ。
【宇野】この規模にチャレンジしたことは、結構本質的な話だと思うよ。規模のレベルで、これまでとは違う鑑賞体験にならざるを得ないと思うんだよね。既存の美術展って、普通は長くても数時間くらいで観終えられる想定のもので、これまでのチームラボの展示もほぼその範疇にあったと思う。
でも今回、全部をしっかり観るには最低半日は必要で、むしろテーマパークとかに近いものになってるよね。しっかり観ようと思うと、丸一日かけても作品のすべてを観きれない。