シンプルさを追求しているのにロゴが大きいのは、ロゴそのものをパッケージデザインとして捉えているからです。アメリカで使われるトラックのバックに「TOYOTA」や「NISSAN」などとデカデカと入っているのも、広告ではなくカッコいいデザインになっていますよね。
当時は、街を走るBMWやベンツなどを後ろから見ると、リアガラスにはscottieが乗せてあったものです。その多くは白。5色展開ですが、あくまで白が核になっています。他の色はバリエーションとしての位置づけ。白いTシャツに飽きたら、黄や青だって着たくなるでしょう。
こうして完成したデザインがコンペで優勝したことを電話で聞いたとき、担当者が「テーマは花柄だったのですが」と言ってきたので、「花柄だったんですか。華のあるものだと思っていました」と言い逃れをしました。「秘すれば華」などと世阿弥の「風姿花伝」をなぞったわけではありません。
花柄とロゴという2つのルールを度外視できたのは、まだ若かった私が世界の猛者たちとまともに戦っても、勝てないと思ったことが大きい。オリエンテーションよりも、自分を信じようと決めたのです。
累計売り上げ数27億箱の超ロングヒット
日本製紙クレシアが発売。1986年からこのストライプデザインのパッケージに一新した。リニューアルから、累計売り上げ数はおよそ27億箱(5箱パックに換算して5億4000万パック)を突破。94年、グッドデザイン賞受賞。2012年、グッドデザイン・ロングライフデザイン賞受賞。
1940年、東京生まれ。東京藝術大学美術学部卒。資生堂宣伝部を経て、71年松永真デザイン事務所設立。ニューヨーク近代美術館ほか、世界各国86カ所の美術館などに多くの作品が永久保存。「平和ポスター」、大ベストセラーとなった「日本国憲法」、「タカラカンチューハイ」、資生堂「ウーノ」など代表作多数。