義足のランナーが走っている映像をテレビで観て、その美しい姿に感銘を受けたのが、義足に強い興味を持つようになったきっかけでした。人体と人工物の一体感が、それまで私がずっと探っていた「未来の人と物との関わり方」を実現しているように思えたのです。
実際に義足のランナーたちと話してみると、みんなが自分の義足を身体拡張の道具として受け止め、愛していることに気づきました。しかし同時に、足先だけが本物っぽい義足を装着した立ち姿からは、痛々しさも感じます。ほぼデザインされていない部品も多数見られました。そこから私たちの「美しい義足」プロジェクトがスタートします。
2009年から、私の研究室では、ロンドンパラリンピック日本代表の高桑早生選手とともに、陸上用の義足を手がけてきました。3回のアップデートを経たVer.4.0の義足は競技大会本番で使えるまでのものになり、現在は東京パラリンピックを目指して新しいバージョンの開発に取り組んでいます。
切断者は一人ひとり体形や切断位置が異なるので、義足は本来オーダーメードであるべきです。しかし、第一次世界大戦後に大量生産化され、アルミパイプと標準化された接続部品を使うことで、切断端にかぶせるソケットをオーダーメードするだけで様々なサイズが作られるようになりました。これにより、たくさんの人に安く供給できるようになりましたが、義足の外観はとても無骨なものになってしまい現在に至っています。