一方、医学博士で作家の米山公啓先生は、「朝のほうが脳は働くという科学的根拠はない」と言う。
「起きたては脳が覚醒していないので、むしろ作業効率は悪いでしょう。脳は、その活動にブドウ糖(グルコース)を使います。しかし睡眠中はブドウ糖を補給できないため、目覚めたばかりのときは働きが悪いのです。脳の働きをよくするには食事をしてグルコースを脳に送り込む必要がありますが、チョコレートなどは血糖値が急に高まってしまうので別の問題が起きてしまいます。徐々に血糖値を上げるにはデンプン、つまりご飯がいい。食事をして2時間後くらいがピークです」
ただし、朝時間にもメリットはある。
「人間の集中力は、約1時間が限度。集中した後には適度な休息が必要ですが、ビジネスマンは何度も休憩を取れないため、1日の後半になるとどうしても脳に疲労がたまってきます。その点では朝が有利といえます」
また、完全に目覚めていないからこそ、朝に向いた仕事もあるという。
「寝ている間は理性を司る前頭葉の働きが落ちて、脳の後ろ側の視覚領域を司る部分が活性化されます。睡眠中に、論理的につじつまの合わない、おかしな夢を見るのもこのためです。ただ、これはときに創造的なアイデアに結びつきます。難しい問題があって解決策が浮かばないときに、会議を延々と続けても答えは出にくい。難しい問題を考えるなら寝起きがいい。その問題のことを考えながら睡眠に入ると、翌朝、予想外の答えが見つかっているかもしれません」
医学博士、作家
聖マリアンナ医科大学で自律神経機能の評価や老人医療・認知症問題などに取り組んだ後、1998年退職。現在、米山病院で診療をしつつ、著作活動、テレビ出演などで活躍。
医学博士、東日本国際大学客員教授
東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。2010年までフランスCEAサクレー研究所勤務。
東京医科歯科大学
認知神経生物学分野 教授東京医科歯科大学大学院歯学研究科博士課程修了。日本大学大学院教授を経て、2010年より現職。認知神経科学の研究に取り組む。脳科学をテーマにした人気ドラマも監修。