顧問になって中国語の勉強を始めた理由

このところ、外国人観光客数も1カ月当たり150万人に近づき、ときならぬ日本ブームだという。かつては、電気製品や自動車の品質の良さからメイド・イン・ジャパンが世界を席捲した。そうした商品の魅力から、いまはむしろ日本人、そして日本社会や文化の魅力が認められている気がする。それは、もてなしの精神であり、繊細な気くばりにほかならない。また、田舎の暮らしにいまでも残る素朴さだ。そうしたものに外国人が魅かれるのではないか。

実は、私はこの3月に顧問になってから中国語の勉強を再開した。この1年間で日常の会話には不自由のないレベルまでいきたいと決意している。中国語を選んだのは、仕事で何度か訪中したことに加え、漢詩、とりわけ唐代の詩人たちの作品がとても好きだからである。顧問就任は私にとって、リタイヤではない。新たな出発である。中国という悠久の歴史を学びたいと考えている。

同じアジアの隣国を理解することは、日本を知ることにも通じる。おそらくそれは、日本人としてのプライドの再認識につながるものだともいえる。これができれば、相手を理解することはむずかしくない。そのことは、他人を許容する心を持つということでもあるわけだ。これは相手のスタイルに合わせることではなく、自分の流儀を持ちつつ、お互いの違いを認識して語り合い、主張し合う関係である。

そう考えると、自分自身の人間力を高める語学の習得こそが大切ということになる。もちろん、テクニカルな面をおろそかにしていいということではない。そのプロセスを踏まえたうえで、日本人としてのアイデンティティも確かなものにしていくということだろう。そうでなければ相手からも認められない。やはり、日ごろからの積み重ねが重要になってくる。

(岡村繁雄=構成)
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