「ケンカをするときは本気でやれ!」

昭和シェル石油 香藤繁常会長兼CEO

社内改革を推し進め、その使命をまっとうしようとしたとき、私はリーダーシップの必要性を痛いほど感じた。なぜなら、仕事は1人ではできない。変革推進本部準備チームの仲間3人、そして、各部門に働きかけて理解を得た人たちの助けが必要だった。一緒に抵抗勢力という厚い壁を打ち破っていくわけである。そのときに、周囲を鼓舞できる力量は絶対に欠かせない。

変革推進運動を展開していく過程で学んだことのひとつは「ケンカをするときは本気でやれ!」ということ。改革に取り組んだ90年代後半は、合併会社(1985年に昭和石油とシェル石油が合併)特有のバランス感覚がまだ色濃く残っていた。例えば、何か重要な案件を審議する際にも互いに遠慮があったりする。確かに波風は立たないかもしれないが、それは見かけの融和でしかなく、本音のぶつかり合いにはならない。

本部の4人はそれぞれ出身も違うし、育ってきた社内文化も異なる。やはり、何度も大喧嘩をした。だがそれによって、相手の心のうちが理解できるようになる。そして、裸でぶつかると、後にわだかまりは残らない。やがて、私たちは一体化したチームになっていった。そうなれば、組織は機能していく。当時26名いた取締役も半減することができたし、組織の統廃合も達成することが可能だったのである。

その際、私が心がけたのが、物事を決めるに当たって“5W1H”を明確にするということだ。すなわち、“誰が、何を、いつ、どこで(どこを)、なぜ、どうやって”を、一定の時間軸のなかで決めていく。それができると、目標が具体化し、責任の所在もはっきりする。経営改革の現場では、どこを変えるかを的確に判断し、場合によっては事業領域の一部をバッサリ切るといった決断を迷いなく下す。そして大事なのは勇気を持って遂行していくこと。