最大の力はトップのコミットメント

トップのリーダーシップはとりわけ重要だ。我々の背中を押してくれる最大の力はトップのコミットメントにほかならない。取締役に退任を迫るには「あなたが抵抗するなら、こちらも命を投げ出しますよ」と相討ちの覚悟で対峙しなければならない。敗れたら、骨を拾ってくれるのがトップである。それがなければ、いかに優秀なメンバーを揃えたとしても総崩れしてしまう。

当時、昭和シェル石油は会長と社長の“二頭政治”だった。どちらがCEO(最高経営責任者)かわからず、業務執行上の権限も、ここは会長、あそこは社長といった具合。会議をしても時間がかかり、加えて結論が出にくい。そんななか、突如として社長が勇退を表明したのである。健康上の理由ということだったが、不毛な社内政治に嫌気がさしたのかもしれないし、さらに深読みすれば、自身が身を退くことで変革の捨て石になろうとしたとも考えられる。

いずれにしても、会長が社長を兼務することで指揮系統が明確になり社内の求心力が増す。いってみれば、会社という船が嵐の海を通過する際、トップみずからが操舵室に立ち、進路を指し示すようなものだ。多少の抵抗なら、いとも簡単に乗り越えていくことができ、改革は一気に加速した。意思決定は非常に速いし、経営のスピード感もアップする。これがまさにトップダウンの強みといっていいだろう。

そしていま、当社を取り巻く経営環境は、あの変革推進の頃と似てきた。今回は自社だけでなく、業界全体の改革も避けられないだろう。だから私は、社員に「勇気を持つ変革者たれ」と呼びかけている。わが社では人材ビジョンとして、(1)自律考動、(2)外向き志向、(3)チーム意識を掲げている。この三要素こそが変革期に求められる社員像であり、それに基づいて、1人ひとりがリーダーシップを発揮してほしいと思っている。

香藤繁常(かとう・しげや)
1947年、広島県生まれ。県立広島観音高校、中央大学法学部卒。70年シェル石油(現昭和シェル石油)入社。2001年取締役。常務、専務を経て、06年代表取締役副会長。09年会長。13年3月よりグループCEO兼務。