沖縄の産業振興、雇用創出に役立つ解を

沖縄の基地問題は日本のカラクリの最たるものだ。基地問題で沖縄が炎上を繰り返す根本的な理由は、沖縄返還の真実を政府が国民に説明してこなかったことにある。72年の沖縄返還に際して、アメリカ政府は「軍政がこれまで通りなら、民政については返還する」という条件を出した。だが、そのことを時の自民党政府は国民に一切説明せずに、「我々が沖縄を取り戻した」と返還の手柄だけをアピールした。軍政が残された以上、米軍が沖縄の基地に核を持ち込もうが、貯蔵しようが、日本政府は文句を言えない。

アメリカは「民政は返してやったけど、軍政は自分たちの権利」と考えているから、日本の防衛とは直接関係のないベトナム戦争や湾岸戦争にも沖縄の米軍基地を使ってきた。当然、オスプレイの配備を日本政府に相談する理由はないし、「普天間基地が危ないというなら辺野古でもどこでも、さっさと代替施設を用意しろ。それから移転経費はおまえたちが払え」というのがアメリカの言い分。好きなように使えて、思いやり予算で駐留経費の面倒まで日本が見てくれるのだから、こんなに条件のいい在外基地はない。

一方、「民政だけ返す」という日米両政府の密約について、日本政府は国民に対して口をつぐんできた。代わりに、先の大戦で唯一の地上戦の地となったための戦禍や戦後長らく米軍の施政下に置かれた歴史的事情、さらにわずか0.6%という狭い国土に在日米軍基地の約70%が集中する基地負担の重さなどを理由に、政府は沖縄振興特別措置法(12年4月に22年まで延長する改正法を施行)を制定して、これに基づいて莫大な補助金や助成金を沖縄に投じてきた。72年の本土復帰から40年以上続いてきた沖縄振興予算の総額は10兆円超。だが、そのほとんどが公共事業に費やされて、沖縄の産業振興、雇用創出には役立ってこなかった。また沖縄県民も補助金に甘えてまともに産業振興に取り組んでこなかった。振興予算以外にも軍用地代、各種税金の軽減措置など、さまざまな形で特別扱いを40年以上受け続けてきた。その結果、地場産業が育つこともなく、県財政の約75%を補助金に頼る依存体質が染みついてしまった。

25年ほど前、私は「ユイマールビジョン」という沖縄の経済的外交的自立ビジョンを提起した。当時は沖縄の政財界も盛り上がったが、補助金漬けで麻痺した今の沖縄には気概の欠片も感じられない。補助金と基地で働く人々の給料を入れても、県民1人当たりGDPは断トツ最下位。そんな沖縄から米軍基地がなくなれば、どうやって食べていくのか。辺野古移設問題はそういう前提に立ち、政府も、沖縄の人々も理性的かつ現実的な解を見つけるしかない。

(小川 剛=構成 時事通信フォト=写真)
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