1■「できません」で帰ってしまう“そんなの関係ねえ”営業マン


日本IBM理事 購買担当●鈴木あや

ますます高度化するバイヤーの要求。なかには解決が困難な課題もあるだろう。営業マンは、どう対応すればいいのか。

「『できないものはできないので仕方ありません』と解決の意志が見られない方には、『当社をご担当される意味がありませんね』とはっきり申し上げました」

こう話すのは日本アイ・ビー・エム(日本IBM)で購買を担当して20年、180人の部下を束ねる鈴木あや理事だ。同じ「ノー」でもできる営業マンは対応が違うという。

「『もし、IBMさんがこういう風にしたいのなら別にこんなタマがあります』と、代案を複数もち合わせた上で、こちらの要求については『ノー』と臆せずにいえる。たいした営業マンだと感心します」
 一方、商業の街、大阪ではどうか。大和ハウス工業で購買一筋20年の杉浦雄一・集中購買1グループ長がいう。

「例えば、こんな営業マン。『工場に頼んでみたんですけれど、でけへんと一喝されまして、難しいみたいですわ』と平気でいってくる人にはとても任せられません。そういう営業に限って、『私はええと思たんですけど』と言い訳をする」

営業マンが「できない」といえば、バイヤーは先へ進めない。工場が拒否しているのだから自分のせいではないと投げ出すか。「私はええと思たんですけど」などという言い訳こそ、「そんなの関係ねえ」とバイヤーはいいたくなるだろう。

 

2■持ち帰っても組織を動かせない“社内力不足”営業マン

では、代案のタマをいくつももつにはどうすればいいのか。日本IBMの鈴木氏が続ける。

「購買としては『あなたがノーというなら、おたくの上司に直接電話するわ』とはいいたくありません。営業マン自身に自分の上位マネジメントをうまく使ったり、他部門を動かしたりして代案をつくれる社内調整力をもってほしいのです。


大和ハウス工業 購買部 集中購買1グループ長●杉浦雄一

これはIBMの営業マンの場合ですが、取引先の要求に応えるため、われわれ購買をうまく使って購入した他社製品を組み込んで提案したりします。

社内調整力は年齢やポストには関係ありません。若い営業マンでも組織を動かせる人は日ごろから社内でネットワークづくりなどを積極的にやっています」

大和ハウスの杉浦氏も「代案を出すには知識と組織の両方が必要」と話す。

「工場のラインが全部埋まっていて、製造現場の人に無理だといわれたとします。このとき、『ここをこうすれば、1ライン空けられるやろ』と現場に対して知恵を出し、社内調整してくれる。なんやかんやいいつつ、『苦労してライン空けましたよ』といわれると、『ようやってくれたなあ』とホロッとします」

営業マンが製造現場に頼んで動いてもらうには、部門を越えた影響力を発揮できなければならない。ここで、社内ネットワーク力が問われる。

「できる営業マンは日ごろから自社工場へ足を運んで、製造現場との交流を深めています」(杉浦氏)

営業は部内での狭い“近所づきあい”に偏りがちだが、他部門との・遠距離交際・をいかに深めておくか。いざというとき、社内調整力となって実を結ぶ。