小宮一慶氏が分析・解説
80歳を超えて、なおトップとして経営の指揮を執る金川氏(2011年当時)の凄いところは、需要家の生の声を重視している姿勢を貫き、毎朝、米国子会社の現地駐在幹部に電話をかけ、その“神の声”を自ら確認し続けていることだ。
その努力の積み重ねで鍛え上げられた「勘」は、市場のちょっとした動きにも反応する。勘といっても、単なる思いつきとは違う。市場ニーズがどこにあるのか、その本質に迫ろうと常に考え続けた末に得た勘なのだ。
思いつきは、当たるも八卦、外れるも八卦の占いの世界の話である。単なる思いつきに事業を委ねたら、ギャンブルになってしまう。もし上司に「そんな思いつきではダメ」と批判されたら、どこまで深く考えたのか振り返ってみることが大切だ。
また、需要家の声の中には、時として苦言も含まれているはず。しかし、それは往々にして自社の改善につながる。経営者には謙虚さや素直さが必要なのだが、マイナス情報に耳を傾ける謙虚さがあるから改善ポイントも見抜けるのだ。しかし、手間のかかることが多く、どうしても目をつぶってしまいがちになる。
1957年、大阪府生まれ。京都大学卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に入行。96年に小宮コンサルタンツを設立し、現職。『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』など著書多数。