私自身、妻と2人で4歳と1歳の子どもを育てていますが、育児は大変な仕事です。決して楽しいことばかりではありませんし、楽できるものでもない。「育児とは子どもの都合に振り回されること」だと実感しています。ではどうやって現実と折り合いをつけるか。私は社会でも家庭でも、育児を「プロジェクト」として考えることが有効だと思います。

オジサマたちは貴重なイクメンを批判する前に、育児とは将来の市場と労働力を育てる国家プロジェクトだと考えてみてほしい。また家庭での行き違いも、ビジネス上のプロジェクトとして発想すれば、投入時間よりも全体への貢献度が重要だと自然に理解できるはずです。

子育て期に夫婦仲が険悪になるのは、貢献度への理解の差が原因だと思います。夫はイクメンのつもりでも、妻からみればイクメンもどき。

「子どもを風呂にいれるぐらいで、イクメンと名乗るな」となる。男女にはそれぞれ得意と不得意があります。男性はプロジェクトにおける「渉外」や「調達」の担当として、予防接種の日程調整や保育所の日報管理などをすると、限られた時間でも貢献度の高い仕事ができるはずです。

育児など家族と過ごす時間は、仕事の生産性を高めることにもつながります。米ハーバード大学ビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授は、著書『イノベーション・オブ・ライフ』で、人間の仕事における満足度の要因を2つに分ける方法を紹介しています。1つは地位や報酬など「なければ不満」という衛生要因、もう1つは「あれば満足」という動機づけ要因です。動機づけ要因は人により様々ですが、育児への参加は、仕事へのモチベーションを高める可能性が高いでしょう。

オジサマたちの不満もわかります。ただ育児が大変なのはせいぜい3歳まで。その短い期間ぐらいは、イクメンを応援してあげてください。

関西学院大学准教授、社会学者 鈴木謙介(すずき・けんすけ)
1976年、福岡県生まれ。2004年東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程単位取得退学。国際大学GLOCOM助手などを経て、10年より現職。近著は『ウェブ社会のゆくえ』(NHK出版)。
(三浦愛美=構成 プレジデント編集部=撮影)
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