少子化が社会問題となっているなか、仕事と育児を両立させたいという女性も少なくありません。しかし、妊娠や出産をきっかけに嫌がらせを受けたり、退職などを迫られることをマタニティー・ハラスメント(マタハラ)といいます。

そうした動きから彼女たちを守るために育児・介護休業法などが整備されています。ところが、その法律を逆手に取り、わがままな主張をして、会社と争う女性も現れました。これを“逆マタハラ”と呼びますが、価値観の多様化の影響でしょうか、いままでなかったことが職場で次々と起きています。

私の事務所に、こんな相談が持ち込まれました。ある食品加工会社に新卒で入社後、食品衛生管理者として9年間務めた女性が、結婚して妊娠し「1年ほど育児休業を取ります」と申し出ました。

そこで、会社としては別の有資格者を採用する。彼女が復職する際には事務職に就いてもらうという条件を出しました。女性も、その提案を受け入れ、後任の採用面接にも立ち会い、復職後に働くことになる事務局に挨拶して休みに入ったのです。

1年後、復帰予定日に会社に電話があり「やはり食品衛生管理者として復帰させてください。違う職種への配置転換は違法ではありませんか?」といいだし、「それを呑んでくれないなら、県の労働局に訴えます」と強硬な姿勢を示しました。

会社側は「あなたは1年前に納得していたのだから」と説得を試みても聞き入れず、ついに「それなら解雇してください」と開き直る始末。調停ということで、労働局雇用均等室の職員も加わりましたが、最終的には自己退職になりました。

なぜこのような事態が起こるのかというと、育児休業を取った女性は、職場復帰後も同じようなイメージで仕事ができると思いがちだからです。社会人としての根っこの部分が未成熟で、周囲と軋轢を生じやすい人が少なくないのも事実です。