時短勤務よりもフレックスを活用

安倍内閣が「女性の活躍推進」を成長戦略の中核として、政策案に「育休3年」を盛り込んだが、これは戦略と施策が矛盾している。長期にわたる育休は、男女の役割分担を強化し、女性のキャリアを後退させてしまうからだ。

大企業の正社員向け育児支援制度は、現状でもすでに非常に手厚い。出産・育児を機に会社を辞める女性は激減しており、復帰後の時短勤務者も多くなった。

もし妻が時短を使えず、育休を終えて早々にフルタイムで復帰すれば、夫は、育児に協力せざるをえないため、仕事のやり方を見直すだろう。しかし、長期の育休や時短は、夫の家庭責任からの免除期間を長期化する。家事や育児は相変わらず妻が担当し、夫は今まで通りに長時間労働にまい進する状態が固定化することになる。

女性のキャリアにも大きな影響が出る。上司は、毎日4時で帰る人に責任の重い仕事は任せられず、それにより時短勤務者の担う仕事の幅や質が長期間限定されてしまう。そして、妻は夫の家庭責任を肩代わりするために自分のキャリアをあきらめ、限られた時間でほどほどに働き続けるのだ。これは企業にとっても夫婦にとっても望ましいことではない。

アメリカの企業では、時短勤務も含め、様々な勤務形態があるが、女性の活躍推進に大きく貢献したのは、時短勤務ではなく、フルタイム勤務の柔軟性を上げることだった。具体的には、企業活動に支障がない範囲で、フレックスタイムや在宅勤務を許可するなどだ。もちろん、妻だけでなく夫もフレックスを活用している。夫の家事分担率は3、4割にも達し、日本とは大きな違いがある。

「仕事・家事・育児」の3つをどのように分担するかは、世界の共働き夫婦に共通の論点であり、その分担比率がその国の女性の活躍度を規制していると言ってよい。日本のように、妻が家事と育児のほぼすべてを負わされる状況では、女性が仕事で活躍できるわけがない。