就業規則で事前予防を図る
では、そんな女性たちに、どう対処していけばいいのか――。絶対的なNGワードは「子供がいるからって甘えないでほしい!」です。怒りにまかせて感情的な言葉を発してしまえば、彼女は「だったら戦ってやる。私が正しいことをわからせてやる」となって、そこから底なし沼にはまっていきます。
正しい指導のポイントとしては、自分の代わりに仕事をしてくれている人の存在を認識させます。
「お子さんがいるのに仕事をするのは大変ですね。でも、会社はチームワークで業務をこなしているのですよ」と、子供の発熱などで抜けたとき、その仕事を肩代わりしてくれた人への感謝の念を教えることが重要です。
ただ、あてつけがましくいうと逆効果になるので「Aさんも急ぎの注文を抱えているけれど、あなたが負担にならないように引き受けてくれるみたいよ。だから、何かの機会にお礼だけは言ってね」と伝えます。
あるいは、仕事の渡し方に一工夫してみてはどうでしょうか。たとえば育児を理由に早退を繰り返す人には、「この仕事は丁寧さが必要だから、ぜひあなたにお願いしたいの」とか「先方があなたをご指名なの」といえば悪い気はしないはずですし、モチベーションも向上するでしょう。
もし、あなたが経営者ならば、事前予防策として何より大切なのが、関連法規の知識を得て、それを強い味方にすることです。前述の育児・介護休業法はもとより、労働基準法も押さえてください。そのうえで、きちんと就業規則を定めておきます。その中に盛り込んでおくべきなのは、復職後の職種、勤務時間、休業期間中の給与、加えて、会社の教育・バックアップ体制などです。
今回の例のような、いわゆる“人事リスク”は、今後も増えると考えておく必要があります。その意味で、できれば普段から、社員にはやさしい会社ということを打ち出しておくことが、リスクを未然に防ぐことにつながります。
田北 百樹子
札幌市生まれ。1996年に田北社会保険労務士事務所を開業。就業規則の作成、人事考課制度の導入など幅広い対応を行う。著書に『シュガー社員が会社を溶かす』など。