「作る・売る・分配する」3人の部下を育てる

片腕候補の社員が見えてくるあたりから、会社のこれからを引っ張っていく中心社員も育てていかなければならない。私の父であり、日本経営合理化協会の理事長は、よく講演の中で「自分の片腕、プラス3人」と言っている。3人とは、「作る(製造部門)・売る(営業部門)・分配する(総務部門)」の3人だ。これが最小単位の組織となる。

会社の組織が大きくなってくると、その「作る・売る・分配する」部門の3人が、自分の下にまた3人の部下を育てていくこととなる。またその下に3人……というようになっていく。

役職が増えれば増えるほど情報の伝達が遅くなるので、「理想の組織」とはフラットな組織だと私は思っている。まずそういった組織のイメージを頭の中に持つことが大切だ。組織をイメージしたら、次は誰を部門長にするかというのを、おぼろげながらでも考えてもらいたい。私は10~15歳刻みほどで、「この人の次は、この人」と順を追って組織を考えるようにしている。

「ウチの会社には、人がいなくて……」と嘆く社長がいるが、それは育て方の問題だ。部門長というのは「後継社長」と「社員」をつなぐ重要なピン、リンキング・ピンの役割をしている。それだけ重要な役割があるのだから、そういう目的を持ち、早くから意識して社員を教育していく、将来を見越して育てていかなくてはいけないのだ。

このときも、単に「仕事の能力」が高い人を3人選べばいいかと言うとそうではない。誰をどの部門の長にするのか、その適性をしっかりと見極める必要がある。人それぞれ能力が異なるので、作るのが得意なのか、売るのが得意なのか、あるいは総務系の仕事が得意なのか、社員のいいところに目を向けて、適材適所に配置していくようにしなければならない。これは社長にしかできない仕事だ。

モノを作ったり研究したりすることが好きな社長は、そういうことが得意な人ばかり採用して強化し、売ることを疎かにしてしまうことがある。逆に、売ることが得意な社長は営業ばかりを強化して、既存商品を磨いたり、新商品の開発を疎かにしがちだ。挙句、会社の数字を経理に任せきりにして、不正が起きても気づかないことさえあったりする。そういった偏りが起きないように、社長は社内に広く目を向け、バランスよく人を采配していかなければならないのだ。

「仕事の能力」が高い人ばかりが集まった組織というのは、リスクが高い組織だ。会社として経営していくのであれば、「仕事の能力」だけを見て判断したり、そこだけを求めてはいけない。一人ひとりの得意なことやタイプ、考えや思っていること、仕事に対するモチベーションや会社への忠誠心に目を向け、いくつかの基準を持って多様な社員を増やしていってもらいたい。

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