片腕候補は報・連・相のマメさが決め手
後継社長にぜひ育ててもらいたいのが、自分を支える片腕となるような社員だ。中小企業の中には、何もかも自分で決めて完全にワンマン経営をしている社長が多々いる。そんな社長は決まって、「自分には片腕なんて必要ない」と言うが、社長というのはとにかく忙しい。会社を留守にしていることも多いので、留守中に緊急なトラブルがあったときに正しい判断ができたり、すぐに社長の代わりに現場に飛んで行ける片腕が絶対に必要だ。
特に食品関係や生き物を扱っている会社、工場などは、トラブルがあった場合、初動が重要だ。ラインをストップしたり、取り引き先への対応をしたり、ときには早期に回収しなければならないこともあるかもしれない。その対応が遅れれば遅れるほど会社の信用に関わってくる。ワンマン経営の人は、そういうときにいったいどうしているのか、私には疑問に思えて仕方がない。
「片腕にすべき社員」を考える際に、仕事のできる人にしようと思うかもしれないが、それだけの基準ではやはり足りない。ここでは、「きちんと報告ができるかどうか」という基準でも考えてもらいたい。
忙しく日本国内、あるいは世界中を飛び回っているような後継社長が留守の間に、会社を安心して任せられる。そして、留守中に起こったことを後からしっかりと報告・連絡・相談できる。そういう人が望ましい。
留守中に起こったクレームを報告してくるのは最低限、社内で起きたことなど細かいことまで報告してくれる人だと、後継社長も心置きなく外出することができる。そこまで報告してくれる人なら、信頼感が増していくはずだ。
仕事ができても、丁寧でマメな報告・連絡・相談ができない人というのは意外と多い。ビジネスマンにとっていわゆる“報・連・相”を徹底することは基本中の基本とされているが、さまざまな書物やセミナーで繰り返し言われるぐらいなので、実際に完璧に近くできている人はほとんどいないのだろう。
目の前の忙しさに追われて、電話1本、メール1通の連絡ができなかったり、ちょっとした報告を怠ってしまったりすることはあるかもしれないが、「そんな連絡、受けていない」「そんな報告、聞いていない」ということが続くようでは心もとない。頼んでもできないようでは片腕にする意味がないし、相手に対して徐々に不信感が募っていくことだろう。
何かをいただいたときのお礼の連絡、企画会議の内容報告、仕事の段取りや進捗状況など、ちょっとしたことかもしれないが、細やかな対応がいつでもサッとできる人は一目置かれる存在のはずだ。かゆいところに手が届くような情報を伝えてくれる、小さなことでも報告ができる、そういうマメな人がいい。こちらから問い合わせなくても報告してくれるようなタイプだ。どんなに仕事が速くできても、それを報告しない、こちらから聞かない限り伝えようともしないようではいけないのだ。