その発信元は、1人がオバマ米大統領。ISILの最近の戦い方は防衛が主で、米国を中心とする有志連合側の空爆により負けが込んでいるという。もう1人はイラン革命防衛隊のコドス軍司令官カーセム・ソレイマニ将軍だ。同将軍によれば、ISILがイラクとシリアでの戦闘で敗北を重ねており、相当数の戦闘員が犠牲になり、長くは持たないという。
彼ら2人がそう判断したのは、ISIL側が交戦で後退するケースが増え、かつ実際に敗北していくつもの拠点を放棄しているからだろう。その敗北の典型例は、シリアの北部にあるコバネ市の攻防戦だ。ここでISIL側はクルド人民兵と、クルド自治区から送られたペシュメルガ軍に敗れている。
ISILのイラクにおける戦いの目的は、イラン政府と非常に深い関係にあったマリキー・イラク前首相追い落としだった。マリキー氏の存在はイラクのスンニー派にとって最大の不満であり、欧米にとっても不愉快だった。
さらにシリアでの目的は、南北に国家を分断することにあったと思われる。クルドがその北部を支配し、パイプラインが通り、ペルシャ湾の海底にある膨大な量のガスが開発され、地中海から欧米の消費地に届けられる――その目的は見事に達成された。
今後、彼らは戦場をトルコとリビアに移すと思われる。まず、トルコは当初の良好関係と異なり、ISILへの締め付けを厳しくしていることに加え、コバネの報復をすると考えるトルコ在住のクルド人が多いからだ。
リビアにはISILにバイアをしたファジュル・ル・リビアというイスラム原理主義戦闘集団が東部地域に陣取っているし、西部のトリポリにはアンサール・ル・シャリーアト・ル・イスラームというムスリム同胞団系の、イスラム原理主義戦闘集団が存在する。そのどちらもISILに対しては極めて好意的なのだ。
しかも、リビアには石油がある。それを支配できれば、窮地にあるISILは再度世界に向けて、戦闘範囲を拡大していけるということであろう。