日本人はケータイをいじりすぎ?

『面と向かっては聞きにくいイスラム教徒への99の大疑問』佐々木良昭著 プレジデント社刊

来日したイスラム教徒が驚くのは、まず、信号が青になるまでじっと待っている日本人の生真面目さだ。交通量が多い昼間ならともかく、クルマがほとんど走っていない真夜中であっても、信号を順守する。

その様子を見たイスラムの人々は、「どうしてなんだ?」と一様に首をかしげる。

また、電車やエレベーターに乗り込む際に、割り込みをしない日本人の姿にもびっくりさせられるようだ。日本人は行儀がいいのである。

あるいは街並みの清潔さにも驚く。とくに銀座や丸の内、原宿あたりのメインストリートにはゴミ一つ落ちていない。こうした清潔さは、イスラム圏の人々だけでなく、アジア諸国からのツーリストたちにも共通する日本に対する評価である。多少の息苦しさを感じることはあっても、総じて印象はいいはずだ。

よく話題になるといえば、なんといっても夏場の若い女性たちのファッションだろう。

とくに、女性がアバーヤ(ガウン)やヒジャーブ(スカーフ)などで顔やボディラインを隠している国々の男たちから見れば、まるで「裸で街を歩いている」というふうに映るらしい。このあたりは欧米も同じなわけで、文化の違いと言うしかない。

また、彼らが一様に「ここがヘンだよ」と指摘するのは、電車の中の光景である。

メールのやり取り、ゲーム、映画鑑賞などと目的はさまざまであっても、下手をすると向かいのシートに座っている乗客の全員がケータイをいじっていることがある。

あるいは喫茶店やレストランで向き合って座っているのに会話を交わさず、メールで言葉のやり取りをしているカップルもいる。これはやはり奇異に映るようだ。

イスラム圏でも携帯電話は普及している。必要な時にはもちろんメールのやり取りもしているが、基本はあくまでも会話の道具としてのケータイだ。駅のホームでも街頭でも、彼らはケータイで大声でしゃべっている。面と向かって座っているのにメールで会話するなどということはまずあり得ない。