小宮一慶氏が分析・解説

情報のインプットだが、単に新聞や雑誌を読むだけではダメ。芦田氏のように、気になった数字を手帳に書き留めるなど、一歩踏み出したアクションが大切である。書き留めることによって、心のなかに情報がフックとして引っかかる。そして、イザというときにサッと頭のなかの引き出しが開き、ひらめきへ昇華させられるようになるからだ。

また、芦田氏のようにデータを手帳に収集していると、自分のなかに独自のデータベースが構築されていく。すると、独自の仮説が打ち立てられていき、情報や現象を正確にキャッチしていくこともできるようになる。

さらに、プレゼンが上手になる利点もある。説得力に欠けてしまうのは「安くしたら売れる」といった漠然とした意見しか出せないから。しかし、頭に生きた数字を蓄えていくことで、「5円安くすることで、1万個の売り上げ増が見込める」というように、具体的かつ説得力のある数字で物を語る思考法が自然と身についてくる。

確かに書き留めるという行為自体はささいなものであるが、その積み重ねが重要なのだ。厚さ0.1ミリメートルもないコピー用紙だって、500枚束ねると4センチメートル強の厚さになる。芦田氏をはじめ、ここに登場する経営者は、正しい努力とは何かを知り、それを積み重ねながら成功してきた。そうした努力を、私は「紙一重の積み重ね」と呼ぶ。

小宮コンサルタンツ代表取締役 小宮一慶 
1957年、大阪府生まれ。京都大学卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に入行。96年に小宮コンサルタンツを設立し、現職。『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』など著書多数。
(小宮一慶=総括、分析・解説)
関連記事
「できる理由」を仲間とともに模索する -アサヒグループホールディングス相談役 荻田 伍
「気づき」「気になる」メモで、手帳は十分に活用できる
どのような情報を取る、インプットするべきか
リッチな人が2015年の手帳に真っ先に書き込む「数字」
インプットのための工夫は