【田原】もう一つの懸念が、少数民族問題です。ウイグルやチベットで血なまぐさいことも起きている。
【丹羽】少数民族問題は、歴史的にそう簡単な問題ではないでしょう。毛沢東が1949年に政権を取り、しばらくの間は「五族共和」といっていた。五族は漢族、満州族、蒙古族、チベット族、回族(ウイグル族などイスラム系の民族)です。それで何が起きたかというと、ウイグルの自治区独立運動は一度潰されたし、チベットもダライ・ラマがインドに逃げざるをえなかった。そういう長い歴史があるから、すぐには解決しない。
【田原】民主派への取り締まりや少数民族への締め付けを考えると、中国が日本やアメリカのように民主化していくのは難しいように思えます。
【丹羽】民主化はするでしょうが、時間がかかるでしょうね。今、全人代(全国人民代表大会)は3000人の代表がいます。3000人で国会を開いたら、1人1分話しても50時間かかる。これでは議論もできないでしょう。まともに議論しようとするなら、500~600人が限度です。だとすると、中国を5~6つの国に分けて連邦共和国制にするのが一番いい。それにはまだ時間がかかるということです。
【田原】連邦制というと、かつてのソ連邦のイメージですね。
【丹羽】そうです。ただ、連邦にするとき、経済力に格差があると失敗します。強いところが弱いところに引っ張られて経済がむちゃくちゃになるのです。中国は沿岸部と内陸部で非常に格差が大きいので、今はまだ無理でしょう。西のほうに経済力がついてきて、初めて連邦制も現実味が出てくるでしょう。常識的にいって独裁政権で14億近くの民を統治するのは難しいですから、いずれ連邦制に移行せざるをえなくなる。