【田原】ロシアですら選挙があるのに、事実上、選挙がない体制はいつまでも持続できないでしょう。
【丹羽】選挙は大事です。かつて韓国はクーデターや大統領の暗殺が相次いでいましたが、87年に普通選挙を実施して以来、クーデターが起きていません。だから、選挙が持つ意味は本当に重い。中国も普通選挙をやれば、軍隊が国民に銃を向けられなくなるのではないですか。
【田原】今、まさに香港で学生たちが民主的な選挙を求めてデモをしていますね。選挙は一応するけれど、立候補者は共産党が決めるという。中国の今の選挙を、普通選挙と呼べるのかどうか、疑問です。
【丹羽】国際的な基準からいうと、中国のそれは、明らかにズレています。ただ、さきほど申し上げたように、民主化は一気には実現できません。かつて全人代は中国共産党員でなければなれなかったのですが、今、党員以外も数%入るようになりました。もちろんそんなものは見かけ倒しで、実際は中国共産党の意向は無視できないのですが、最初はそういう形で緩やかに進むしかない。香港も同じ状況です。
【田原】この前ある人から、ソ連のゴルバチョフはレジーム(体制)を変えてロシアを革命的に変化させたが、中国は中国共産党のレジームを変えるつもりはなく、ゴルバチョフは出てこないだろうという話を聞きました。
【丹羽】私は非常に時間がかかるけれど、いずれは体制が変わると思っています。やはり国家資本主義は続かないですよ。
【田原】今、中国は、国家資本主義ですよね。
【丹羽】話が脇道に逸れますが、日本も国家資本主義に近くなっているのが心配ですね。最近は政治家が経済のことに口出ししすぎで、中国とどっちが国家資本主義なのかわからない。給料を上げろ、女性幹部を増やせ、残業をなくせとかね。国家資本主義は、競争力を奪います。企業おのおのが独自の経営をしていかないと、日本の経済は強くならないですよ。