――本のなかで3大療法(手術、放射線、抗がん剤)を否定しないとも書かれていますが、こうした治療を行っている西洋医学の医師からどんな反応がありましたか。
【ターナー】この研究を続けてほしいという要望もきています。特に「管理化」された状況で研究してほしいというもので、実際にニューヨークの大学病院でその話が進んでいます。
――つまり、この本を読んで、協力を申し出た医師らが出てきたということですね。科学研究では管理化された状況でテストすることはとても重要です。
【ターナー】その通りです。でも、わたしの仮説を管理化された状況で検証するのは非常に難しいことも確かです。わたしは伝統的な治療法を受けずに治癒したがん患者を見つけましたが、仮説検証のためには患者たちを無作為に、化学療法を受けるグループとそうでないグループに分ける必要が出てきます。
――そのことに対して患者自身に同意書に署名してもらわなければなりませんね。
【ターナー】そうです。化学療法が向いていない患者かもしれません。そういう試験をがん患者で設計するのは非常に難しいことです。現時点では、どちらのグループに入れるにせよ、ボランティアで研究に参加してくれる患者を集めているところです。盲検試験ではありませんから。盲検試験は倫理的にできません。
――いつからその話が出ているのでしょうか。
【ターナー】アメリカで本が出て、2、3カ月経ったころですね。昨年の6月ごろからからです。この試験には100万ドル以上かかるので、資金集めにも取り組んでいるところです。
――「がんが自然に治った」というと「治ったのではなくてそもそも誤診だった」という見方があります。それについてどう思いますか。
【ターナー】「誤診だったのでは」というのは、自然治癒したがんに対する医師の典型的な意見です。ステージ4の肺がん患者が治ったという場合、「その段階のがんは治るはずがないから、そもそも肺がんではなかったのではないか」というのは非常に頑ななものの見方です。でも、そう考える医師の気持ちもわかります。わたしが本でとりあげたような例は、彼らが医学部のトレーニングで身につけた考え方からすれば、筋が通らないからです。
ですから、そういう例を聞くと「それはそもそも誤診に違いない」という気持ちになってしまうのも無理もありません。でもこの20~30年の劇的寛解(radical remission)と自然寛解(spontaneous remission※)のすべてのケースには病理報告書がついています。細胞の画像もあります。病理学専門の医師がそれを見て正しい診断であると立証してくれました。
実際に医学誌に報告されている劇的寛解の論文には細胞の画像も出ていて、それががん細胞であることが確認されています。自然寛解のケースも同じです。(続く)
※ターナー博士は、積極的な治療なしにがんが治癒するケース(spontaneous remission)と患者自身の取り組みによってがんが治癒するケース(radical remission)を区別しています。
腫瘍内科学領域の研究者。学士号を取得したハーバード大学時代に統合医療に関心を持ち、カリフォルニア大学バークレー校にて博士号取得。博士論文研究では奇跡的な回復を遂げた1000件以上の症例報告論文を分析し、1年間かけて世界10カ国へ出かけ、奇跡的な生還を遂げたガン患者と代替治療者を対象に、治癒に至る過程についてのインタビューを行った。本書はそこから得られた知見を患者や家族、そして健やかに生きたいすべての人のためにわかりやすくまとめた著者初の書籍。