ベストセラーを連発し、セミナーや講演活動などで多忙な毎日を送っている経営コンサルタントの神田昌典さん。4年前、悪性黒色腫(メラノーマ)と診断され、一度は人生を閉じることを覚悟したといいます。いくつもの幸いが重なって、病気は完治しました。その過程で自分に合った治療法を徹底的に調べ、試したそうです。神田さんが、プレジデント社刊『がんが自然に治る生き方――余命宣告から「劇的な寛解」に至った人たちが実践している9つのこと』(ケリー・ターナー著、長田美穂訳)の原書Radical Remissionを、邦訳が出る何カ月も前に洋書トライアスロンでとりあげてくださったと聞き、本書をどのように読まれたのか、お話をうかがいました。
――悪性黒色腫(メラノーマ)と診断されてどんな行動をとられましたか。
僕のがんは左手の中指の爪にできていて、これが真皮にまで及んでいたらまずリンパ節に転移するといわれ、さらに検査すると左脇のリンパ節に腫瘍があることがわかりました。もし悪性だったら5年生存率は50%と言われました。どうすればこの病気が治るのか、徹底的に考えました。それで、ビジネス書の並んでいた本棚に、一気にがん関係の本が30冊くらい並びました。それまでは未来を切り拓こうとか、そういう本を読んだり書いたりしていたわけですが、病気になったとたんに扉が閉じていくわけです。ですから、そういうテーマにまったく興味を持たなくなりました。僕が当時、とくに希望をもらったのは川竹文夫さんの『幸せはガンがくれた――心が治した12人の記録』(創元社)という本です。この本には薬や医療だけに頼るのではなく、自分の力で治った人たちの体験談が書かれています。
――なぜ本だったのですか。
「がん難民」と言う言葉が示しているように、誰も自分ががんになるなんて思ってもいないので、そう言われたとたんどこに行っていいかわからなくなります。そのなかで本は指標になります。いまはがんもいろんな治療法がでてきて選択できる時代になっていますが、患者が自分のがんに合った治療を決める指針になるような本はほとんどありませんでした。川竹さんの本で僕はずいぶん救われました。この本は「自分はこの治療法で治りました」という体験談ですが、がん患者にとってはとても参考になります。『がんが自然に治る生き方』が画期的なのは、がん大国であるアメリカで、ハーバード大学を卒業し、カリフォルニア大学で博士号をとったという信頼できる研究者が自然治癒の事例を徹底的に調査し、客観的に整理して書いたものだということです。