経営・経済――経営者の頭に一歩近づく厳選の書

■生き生きとした職場を再生

『「日本の経営」を創る』
  三枝匡、伊丹敬之/日本経済新聞出版社

かつて日本的経営は米国からも絶賛された。しかし、1990年代になると立場は逆転。日本企業は米国流マネジメントへ舵を切る。そして、今も混迷のトンネルを抜け出してはいない。米国流でもなく、旧来の日本流でもない、独自の新しい「日本的経営」の構築が求められている。企業の現場で、事業再生や人材育成に携わってきた三枝氏と長年にわたり経営の本質を追究してきた伊丹氏は「今が好機」だという。2人は、社員が目を輝かせながら、生き生きと仕事に取り組む独自の経営スタイルを編み出せと語りかける。

■必修分野のビジネススクール

『はじめての経営学』
  野中郁次郎ほか/東洋経済新報社

経営戦略や組織論、マーケティングなど経営学の主要9分野について日本を代表する経営学者が、わかりやすく解説。文字通り「誌上ビジネススクール」で、各ジャンルの基本的な考え方からトピックまで、ビジネスの実務との関連に触れながら初心者に理解を促す。各節の終わりに、読者のための必読書ガイドブックが数冊ずつ紹介されているのもありがたい。

■カリスマ経営者の金言集

『プロフェッショナルマネジャー』
  ハロルド・ジェニーン、アルヴィン・モスコー、田中融二(訳)/プレジデント社

30年近く前の本だが、内容は古びていない。著者は、かつての巨大コングロマリットだった米国ITTの最高経営責任者として、58四半期連続増益を達成した実績を持ち、「経営はまず結論ありき」と説く。現実的な目標を定めることでゴールがはっきりする。そこへ行き着くためにできる限りのことを行う。そうしたカリスマ経営者の金言が随所に盛り込まれている。

■経営・戦略の本質を探究

『戦略読書日記』
  楠木建/プレジデント社

江戸時代の大ベストセラー『日本永代蔵』から米国の経営者の自伝、本格的学術書まで、幅広いジャンルをカバー。だが、書評や読書法の本ではなく、著者が経営や戦略の本質を探究するために、本と対話し続けた軌跡が述べられていて読者の興味を刺激する。巻末には「僕の読書スタイル」と題するロング・インタビューも収録され、読書とは何かが理解できる。

■創業者が掲げる崇高な理想

『直球勝負の会社』
  出口治明/ダイヤモンド社

世界一生命保険料が高いといわれる日本。そこに風穴を開けようとしたのがライフネット生命だ。大手生保を退職後、60歳で日本初のベンチャー生保を起業した著者の出口氏は、何を考え、いかに行動したか。創業ビジョンに、(1)保険料を半額にする、(2)不払いをゼロに、(3)他社比較可能を掲げた。「自分に正直に理想の保険会社を目指したら、こうなった」という。

 

(岡村繁雄=構成 澁谷高晴、早川智哉(本)=撮影)
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