生涯青春、生涯勉強で頑張ります
近藤さんは学ぶ力を発揮し、小さな店らしい、4つの事業を試みている。1つは、自転車やリヤカーの部品の販売。2つめは、それらの修理。これら2つが大きな柱である。
3つめの事業が、1台10万円前後のリヤカーの販売だ。自社のホームページに、リヤカーを写真入りで紹介する。全国から注文を受けて、メーカーに依頼する。発送は、メーカーからの直送となる。注文してくるのは、全国の役所や会社、工場、ホテル、防災関連団体、小中学校、神社、自治センター、石材店など。販売先から「故障した」という連絡を受けると、タイヤなどを送ってもらい、修理したり、新たなものに取り換える。
4つめの事業が、実用車の部品販売だ。実用車とは数十年前、豆腐屋の店員などが豆腐の販売をするときに乗った自転車のこと。この古い自転車が、静かなブームなのだという。近藤さんの店では、部品で組み立て、完成品を販売している。全国のマニアから注文が相次ぎ、完売に近い状態だ。
「いずれ、実用車のブームの時期が来ると思い、メーカーが処分するときに安い値段で買いこんでおいたのです。買うときは、たたいて買い込みます。売るときは、通常の値段で売る。その差が、儲けとなります。しょいこむ(売れなくて、在庫になること)怖さはありますが、そのあたりのさじ加減は長年の経験でわかります」
4つの事業をしながら、毎日、自転車などのパンクの修理もする。近藤さんの店の値段は、通常1300円。チェーン店などは、800円~850円が多い。1日に多いときは、10人ほどになるという。
「この日銭が、大切なのです。売り掛け値の商売だけでは、小さな店の経営は厳しい。すぐにお金になる日銭がないと、長く経営をすることは苦しくなります」
5つめの事業として始めようとしているのが、中古リヤカーの販売だ。廃品回収などに出されたリヤカーを修理し、安い値段で販売するのだという。
「どのようにして生きていくか、といつも考え抜きます。毎日が勝負ですよ。仕事をしている最中に死んだとしても、後悔はありませんね。自分の仕事に誇りがあります。それを支えてきたのが、商人として学ぶ力ですよ。学歴ではないですね。
かみさん(妻)が文句1つ言わずに、長年、ついてきてくれたことも大きいです。『はい、お金』と手を差し出されることはありますけど……(苦笑)。お金を家に入れることを催促されるから、男は働くのです。私は少なくとも、80歳までは働きます。今あるのは皆様のお蔭。生涯青春、生涯勉強と腹に決めてがんばりますよ」