今の中国の経済情勢には、たしかに懸念すべき事項がいくつもあります。しかし、現在でも7%程度の経済成長率を保っており、これはまだまだ発展していくでしょう。「シャドー・バンキング」の問題や、バブル崩壊についてもいわれていますが、それらは中国経済全体から見れば大きな問題にはならないのではないでしょうか。経済成長のスピードは徐々に落ちるかもしれませんが、中国という国はまだまだ発展していくだろうと思っています。

それでは中国において経営者はどうあるべきなのだろうか。もちろん、国を超えて通じる部分もたくさんあるだろう。経営者のあり方について、稲盛氏は次のように語る。

自分ができるだけ楽をして、労働者をこき使い、大儲けをしようとする経営者が数多くいます。また、ベンチャーを起業し、上場で一獲千金を果たし、若いうちにリタイアするのが人生の目的だと考えている経営者もいます。そんなふうに「ただ儲けたい」「楽をしたい」ということだけが人生の目的では、経営者自身が真の幸福を得ることはできません。また、企業を永続的に発展させることもできません。それよりももっと高邁な目的が、経営者には必要なのです。

ただ儲けるというだけではない、高邁な目的を持つこと。その考え方は、改革開放以来、拝金主義へとひた走り、行き詰まった中国人経営者にとっては救いとなった。まず経営者が事業を成長させるには、強い「思い」を持つことが重要になるという。

事業を成長させる出発点は、「何としても事業を成功させたい」という「強烈な願望を抱く」ことに尽きます。そうした強い「思い」や、格闘技にも似た「闘争心」のない者は、そもそも経営者にはふさわしくありません。逆に、そうした「思い」さえあれば、資金や技術、人材などに恵まれなくても、熱意と執念がその不足を補って、ものごとを成し遂げていくことができるのです。「思う」というだけで目標が実現していくはずがないと考えるかもしれませんが、「思い」には強大なパワーが秘められているのです。

一般的には論理的に推論したり、戦略を組み立てたりすること、つまり頭で考えることが一番大事であり、心に「思う」ことは、大したことではないと考えられています。しかし、「思う」ということは、頭で「考える」ということよりもはるかに大きな力を持つと私は信じています。「思う」ということは、人間のすべての行動の源となっているのです。経営者が何かを強く心に「思う」と、まさにそのことが実現していくのです。