このような議論の背景には、日本の国力が衰退局面にあるという前提があります。右肩上がりの経済成長は望めず、税収は限られている。社会保障費の無秩序な増大で予算が硬直化しており、何かの予算を増やすには、別の予算の削減をセットで考えなければなりません。かつては教師を増やして少人数学級を実現することも、デキの悪い大学生にシェークスピアを読ませることもできました。しかし日本の国際競争力は危機に瀕しています。

今年9月まで日本の貿易収支は37カ月連続の赤字です。これだけの円安傾向にもかかわらず、輸出産業が伸び悩んでいるというのは問題です。国際競争力を回復させるための教育の見直しは待ったなしであることはいうまでもありません。

いま国民の間で議論できることは「少ない予算をいかに合理的に、効果的に使って結果を出すか」なのでしょう。学業成績の改善だけでなく、いじめや不登校にも細かなケアをしていくために、どのような取り組みをすれば効果が上がるのか。それを見極めるためには、提供されるべきデータが決定的に不足しています。

国力の衰退局面では、生活水準の引き下げや公的サービスの切り下げへの覚悟が必要です。教育が社会の根幹をなす重要なものだからこそ、その予算を精査しなければなりません。国際競争力の回復を支えるのが教育だとするならば、教育に携わる人たちの中から、「社会保障費を削減し、教育費に付け替えよ」というはっきりとした主張が出てこなければならないでしょう。

※1:経済協力開発機構(OECD)報告書「図表でみる教育2012」による
※2:平成2 6年5月6日 OECD閣僚理事会 安倍内閣総理大臣基調演説 http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2014/0506kichokoen.html

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