国力の衰退局面では「職業訓練校」も必要
一方、高等教育においても、今年10月、文部科学省の有識者会議で経営コンサルタントの冨山和彦さんの提案が物議を醸しました。冨山さんは産業構造が「Gの世界(グローバル経済圏)」と「Lの世界(ローカル経済圏)」の2つに分かれつつあることから、大学も2種類に分けることを提案しています。「G型大学」は「グローバルで通用する極めて高度のプロフェッショナル人材」を輩出するトップ大学。それ以外の大半の大学は「L型大学」として「職業訓練校化」すべきとしています。
日本では2000年代後半から、どうしようもない定員割れを起こしたり、中国などから就学目的とは思えない留学生を受け入れたりする私立大学が増えてきました。予備校大手「代々木ゼミナール」の大幅な事業縮小やロースクール(法科大学院)の相次ぐ閉鎖も、少子化という止めようもないトレンドの結果です。
俗に言う「腰掛け短大」や「Fランク大学」に2年なり4年という時間をかけて卒業しても、それを評価してくれる企業がない限り、卒業後の選択肢が増えるわけではありません。また大学で教養を培うことが、社会人としての能力を養うことに直結するわけでもありません。このため冨山さんは、産業力を底上げするには「G型」と「L型」に大学を分けてメリハリの利いた仕組みにするべきだ、と説いたわけです。
冨山さんの提案は、現段階ではとても大雑把であるため、感情的な反発を呼び起こし、強く批判されることになりました。ただ、技術の移り変わりの激しいグローバル経済で勝ち抜ける企業と、そこに投入できる人材の確保を考えると、理の上では強く首肯できる部分もあります。
そもそも、安倍晋三首相もこの提案に先立つ5月6日のOECD閣僚理事会の基調演説の中で、グローバル経済へのコミットを前提に、「経済成長を牽引する鍵」として、「私は、教育改革を進めています。学術研究を深めるのではなく、もっと社会のニーズを見据えた、もっと実践的な、職業教育を行う。そうした新たな枠組みを、高等教育に取り込みたい」と述べています(※2)。