地元の代表ではなく「全国民の代表」
12月14日、衆議院議員総選挙が行われます。選挙は、「全国民の代表」(日本国憲法43条1項)である国会議員を選ぶ民主主義の基盤です。しかし日本の選挙制度にはいくつかの問題があります。
ひとつは「一票の格差」です。今年11月、最高裁大法廷は選挙区間の「一票の格差」が最大4.77倍だった2013年7月の参院選の定数配分は法の下の平等を定めた憲法に反するとして「違憲状態」との判断を示しました(※1)。参院選への違憲判断は10年の選挙に対する12年の判決に続いて2回連続です。最高裁は衆院選についても09年と12年の選挙を2回連続で「違憲状態」との判断を示しています。
こうした最高裁の判断は「国会議員は各選挙区の代表ではない」というメッセージにほかなりません。
最高裁は繰り返し「一人別枠制」の廃止を求めています。これは各都道府県にまず優先的に1人を割り振り、残りの議席を人口比例で配分する方式で、過疎地に配慮した制度です。13年の参院選は「4増4減」の法改正後でしたが、最高裁は一部の選挙区定数の増減では「一票の格差」は解消できないとみています。今回の衆院選では、山梨、福井、徳島、高知、佐賀の5県で選挙区を3から2に減らす「0増5減」が行われますが、これも微修正に過ぎません。
「一票の格差」への理解が拡がらない背景には、国会議員を「全国民の代表」ではなく「各選挙区の代表」と考える誤解があるように思います。これは「議員の世襲」というもうひとつの問題に象徴されます。
今年10月、衆議院議員の小渕優子氏が後援会の不明朗な資金処理問題の責任を取り、経済産業大臣を辞任しました。小渕氏は、小渕恵三元首相の娘で、父親から群馬県の地盤を引き継いだ典型的な世襲議員です。
日本の選挙運動は、地盤(後援会組織)・看板(知名度)・カバン(選挙資金)の「三バン」を使って家族ぐるみで行われてきました。ある議員が引退すると、その家族が「三バン」を受け継ぐこともしばしばです。小渕氏の後援会でも、会計責任者は親の代からの「金庫番」でした。