とはいえ、組織が大きくなれば、どうしても組織は縦割りになり、ルールが増えて官僚的になっていきます。それは一概に悪いことではなく、避けられない部分もあるでしょう。当社では4半期に一度、マネジャー合宿を組んで、全社で100人ほどのグループリーダーが集まります。そこで私が彼らに求めるのは「ツーランク上の目線」です。マネジャーになれば自分が経営陣だと思ってもらいたい。自分のグループだけでなく、全社を見渡す高い視点でビジネスを進めていく。それが縦割りや官僚化の弊害を防ぎます。
また、当社では人材の質を維持するために、人事委員会を月2回の頻度で開いています。参加メンバーは役員と人事スタッフ。必要に応じて、各部門長が参加します。この委員会では、採用や人事ローテーション、新しい部署を組織する場合の構成メンバーなどを検討します。社員を成長させるチャレンジングな仕事の場を、いかにタイムリーに提供するかが主な議題です。
2012年10月、当社はスマートフォン向けの無料通話サービス「comm」をスタートさせました。このcomm戦略室の山敷守室長は、入社3年目。まだ25歳の若さですが、70人の開発部隊をマネジメントしています。この戦略室の設置を最終的に決めたのも人事委員会です。山敷を抜擢した決め手は、彼の挑戦への意欲とポテンシャルの高さにあります。
社員にチャレンジを求めるなら、人事考課の仕組みもそれに適したものが必要です。人材の質を仕事の実績だけで判断するのは不十分。当社では基本給を決定する際はプロセスの評価に比重を置き、賞与の評価は実績を重視します。プロセスと実績のバランスをとることで、チャレンジしやすい環境づくりに取り組んでいます。
質の高い人材は、質の高い人材を呼ぶというのが私の持論です。採用試験では、受験者にできるだけ多くの優秀な社員に会ってもらいます。後日、内定者に「本心から入社を決めたのはいつ?」と尋ねれば、「優秀な先輩と話したとき」という答えが返ってくることが多い。優れた人材が優れた人材を呼び、成長が維持される――。その好循環をつくりだすことが、私の最大の使命だと考えています。
1973年、茨城県生まれ。茨城県立土浦第一高校卒。東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学修了後、日本オラクル入社。99年、システムエンジニアとしてディー・エヌ・エー入社。2009年、取締役兼COO就任。11年より現職。
座右の銘・好きな言葉:ハングリー精神
座右の書・最近読んだ本:『シェールガス革命で世界は激変する』
尊敬する経営者・目標とする経営者:ソフトバンク 孫 正義社長
私の健康法:ランニング